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認知症は治らない?【専門医に聞く認知症Q&A】

認知症専門医の木之下徹さんに、認知症の疑問を聞きました。
  • 撮影・岩本慶三 文・殿井悠子 イラスト・松元まり子

Q.認知症は治らない?

A.認知症は、治らない・進行する・予防できない。でも、早期発見ができれば備えができる。

認知症に効く特効薬や治療は、いま現在、存在しない。ぼくはこれまで5千人以上の方を診察してきたけど、ぼく自身が一番、その人の生活がどう変化していくのか、確かなことを知りたいと、日々思っています。認知機能の低下を緩やかにする薬はあって、現在、日本で使われている薬は4種類。用法、用量については、個々の状態や薬の効果を定期的に観察しながら、細かく判断していく。ただ認知症の薬は、飲んだからといって、ぐんぐん記憶力が回復するものではない。緩やかに進行する。 

認知症になれば、共に生きていかなければならない。それでもなお前向きに生きていくために、「ならない」予防をするよりも、「なっていい」備えをしておきたい。

●抗認知症薬を服用した場合とそうでない場合の比較

●現在使われている認知症の薬

メマリー以外、上から3つは効能も副作用の出方もだいたい同じ。 いずれにせよ、どの薬でもきちんと検査して数値をとらないと、効いているかどうかはわからない。

周辺症状は病状ではなく、原因がほかにあるリアクション

認知症の主な症状は『中核症状』といわれるが、症状でなく機能の低下。ものごとが覚づらくなる「記憶障害」、時間や場所、理由が理解しづらくなる「見当識障害」、言葉が出づらくなる「言語障害」などが代表的。それによって引き起こされるさまざまな症状を周辺症状というが、木之下さんはこれは病気による症状ではなく、正当な原因によるリアクションだと考えている。

認知症の進行具合は10人いれば10通り。人それぞれ過ぎてセオリーはない。

「認知症になった本人が書いた『私は私になっていく 認知症とダンスを』という本がある。その中で彼は、認知症になって“不便だけれど不幸じゃない”と言っている。言葉が出づらくなったり、場所がわかりにくくなったりといったことは、たしかにある。したいことがしづらくなる不便さがある。自分が自分でなくなるという予感は、恐怖以外の何ものでもないでしょう。周囲に打ち明けられずに、自分の実態とかけ離れた認知症像を一人で抱え込むことも。『フラットに見つめてもらえる人に打ち明けたい』という本人の潜在的期待は大きい。いまは社会心理が変化し環境も整ってきたので、その後の暮らしに新たな光が見えてくるかもしれませんね」

まずは、人の気持ちに寄り添うことから見直してみたい。

木之下 徹

木之下 徹 さん (きのした・とおる)

1962年生まれ。東京大学医学部保健学科卒業。2014年、東京・三鷹に認知症外来専門「のぞみメモリークリニック」を開業。著書に『認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由』(講談社)。

『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)

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