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懐かしいと感じるものを身近に置くと居場所づくりにイイと聞きました!【専門医に聞く認知症Q&A】

認知症専門医の木之下徹さんに、認知症の疑問を聞きました。
  • 撮影・岩本慶三 文・殿井悠子 イラスト・松元まり子

Q.懐かしいと感じるものを身近に置くと居場所づくりにイイと聞きました!

A.はたして昭和な家具を置いて、よろこぶかな?居場所とは、心のよりどころのこと。

多くのアルツハイマー型認知症の場合、記憶はしづらい。でも、記憶を引き出すことにあまり障害がない人もいる。とはいえ、居場所づくり=環境づくりではない。残された記憶を辿るより、本人が抱える存在不安に着目したい。心のよりどころは、ここが安心できる場所だとか、こいつは悪いやつじゃないなとか、そういう感覚的な部分で判断されるからだ。

趣味で集めていたレコードの話で盛り上がるとか、一緒に旅をするとか。その人“に”何ができるか(for)ではなく、その人“と”何ができるか(with)を考える。そんな風に思える人と共に過ごす時間こそが、心に潤いをもたらす。

周辺症状は病状ではなく、原因がほかにあるリアクション

認知症の主な症状は『中核症状』といわれるが、症状でなく機能の低下。ものごとが覚づらくなる「記憶障害」、時間や場所、理由が理解しづらくなる「見当識障害」、言葉が出づらくなる「言語障害」などが代表的。それによって引き起こされるさまざまな症状を周辺症状というが、木之下さんはこれは病気による症状ではなく、正当な原因によるリアクションだと考えている。

認知症の進行具合は10人いれば10通り。人それぞれ過ぎてセオリーはない。

「認知症になった本人が書いた『私は私になっていく 認知症とダンスを』という本がある。その中で彼は、認知症になって“不便だけれど不幸じゃない”と言っている。言葉が出づらくなったり、場所がわかりにくくなったりといったことは、たしかにある。したいことがしづらくなる不便さがある。自分が自分でなくなるという予感は、恐怖以外の何ものでもないでしょう。周囲に打ち明けられずに、自分の実態とかけ離れた認知症像を一人で抱え込むことも。『フラットに見つめてもらえる人に打ち明けたい』という本人の潜在的期待は大きい。いまは社会心理が変化し環境も整ってきたので、その後の暮らしに新たな光が見えてくるかもしれませんね」

まずは、人の気持ちに寄り添うことから見直してみたい。

木之下 徹

木之下 徹 さん (きのした・とおる)

1962年生まれ。東京大学医学部保健学科卒業。2014年、東京・三鷹に認知症外来専門「のぞみメモリークリニック」を開業。著書に『認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由』(講談社)。

『クロワッサン特別編集 介護の「困った」が消える本。』(2021年9月30日発売)

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