からだ

耳鼻咽喉科医がすすめる免疫力を高める入浴法。

鼻や口のなかを覆う粘膜が乾燥や炎症によって荒れると、細菌やウイルスと戦う免疫力が低下してしまいます。
液で適度に湿った「うるうる粘膜」を維持するには、どうすればよいのかを紹介します。
  • 文・山下孝子 イラストレーション・松元まり子

粘膜は外敵との戦いの最前線。

人間の鼻や口はのどの部分で合流し、そのまま食道、胃、腸、肛門まで一本の管(消化管)でつながっており、その内側は粘膜によって覆われています。

粘膜はカラダの内側でありながら呼吸や食べ物に含まれる異物に接する場所でもあるため「内なる外」とも表現される部分で、細菌やウイルスなど人体に有害なものが侵入してきたときに備えて、高い免疫力を持っています。

しかし、粘膜の免疫力が高いのは粘液によって常にうるおっているからです。乾燥や炎症によって粘膜がガサガサに荒れてしまえば、免疫力は低下してしまいます。

そこで、粘膜のうるおいを保つためにはどうしたらよいのか、インドの伝統医学アーユルヴェーダを診療に取り入れている、耳鼻咽喉科の医師である北西剛さんに話を聞きました。

粘膜を荒れさせる要因は複数あり、適度に湿った「うるうる粘膜」を維持するためのルールを紹介します。

体温を上げれば免疫力も上がる

免疫力の低下を予防するために、体温を上げるだけでなく、免疫力も高める入浴法を紹介します。

【「冷えは万病のもと」は、粘膜にもあてはまる。】

カラダを温めるために毎日湯船につかる。

免疫力を維持するために理想的な体温は36.5度といわれています。

カラダが冷えると血行が悪くなり、肩こりや疲れなどの不調を招くばかりか、粘膜にもよくありません。

特に寒くなる冬はシャワーだけではなく、お湯につかってカラダを芯まで温めたほうが寝つきもよくなります。

浴槽にお湯を溜めるのは手間ですが、北西さんによると、少し手間をかけるだけで、免疫力を高める入浴法があるそうです。

「カラダに熱ストレスを加えることで、傷んだ細胞を修復し、免疫細胞も強化してくれる働きを持つたんぱく質『ヒートショックプロテイン(HSP)』を増やす入浴法です。熱ストレスという表現はちょっと恐ろしげですが、簡単に言えばしっかり体温を上げる入浴法になります。ただし、HSPを増やす入浴法は、お湯の温度管理などで忠実に行うのは難しいと思いますが、参考にはなると思います」

HSPを増やす。

●40~42度の湯につかり、体温を上げる。

入浴法で増加したHSPは体内に1週間ほど残り、入浴2日後にピークを迎えるから、3日に1度のサイクルでも効果は得られる。年齢や体調にあわせ、無理のない温度での入浴を。

HSP入浴法の方法。

(1)バスタオルと着替えを、浴室から出てすぐ手に取れる場所に置く。

(2)浴槽のふたを開けて蒸気を充満させたり、お湯をかけたりして浴室内を暖かくしておく。

(3) 手→足→体の心臓から遠い部位からお湯をかける。

(4)お湯には足→手→体の順でゆっくりとつかる。ただし、高齢者や体力に自信がない・不安な人は半身浴にしておく。

(5)お湯につかりながら舌の下で体温を測る。38度まで上がるのが理想的。

(6)入浴後の10~15分間は体温が37度を保つように「保温」する。そのため、体をふいたら着替えを身につけ、冬は暖かい部屋、夏は冷房をきかせていない部屋にいる。水分補給も、保温時間中は冷たいものを飲まない。

(5)の目安
湯船の温度:40度 → 入浴時間:20分
湯船の温度:41度 → 入浴時間:15分
湯船の温度:42度 → 入浴時間:10分

※血行促進作用がある入浴剤を使用している場合は、40度のお湯に15分が目安。
※伊藤要子『ヒートショックプロテイン 加温健康法』(法研)を参照して作成。

●高齢者になるほど筋力は衰えやすい。

体温を維持するために必要な筋肉は加齢によって衰えやすく、体調不良で数日カラダを動かせないと、さらに衰えが加速してしまう。

北西 剛

北西 剛 さん (きたにし・つよし)

医学博士

きたにし耳鼻咽喉科院長。滋賀医科大学卒業。専門である耳鼻咽喉科領域の日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本気管支食道科学会専門医に加え、日本アーユルヴェーダ学会理事長や日本東方医学会理事など伝統医学の分野でも多くの資格・役職を持ち、患者に対して幅広い治療の選択肢を提供している。『「うるうる粘膜」で寿命が延びる!』(幻冬舎)など、著書多数。

『Dr.クロワッサン 感染症に負けない、カラダをつくる。』(2020年11月30日発行)より。

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