耳鼻咽喉科医がすすめる「うるうる粘膜」のためのストレス対策。
液で適度に湿った「うるうる粘膜」を維持するには、どうすればよいのかを紹介します。
文・山下孝子 イラストレーション・松元まり子
粘膜は外敵との戦いの最前線。
人間の鼻や口はのどの部分で合流し、そのまま食道、胃、腸、肛門まで一本の管(消化管)でつながっており、その内側は粘膜によって覆われています。
粘膜はカラダの内側でありながら呼吸や食べ物に含まれる異物に接する場所でもあるため「内なる外」とも表現される部分で、細菌やウイルスなど人体に有害なものが侵入してきたときに備えて、高い免疫力を持っています。
しかし、粘膜の免疫力が高いのは粘液によって常にうるおっているからです。乾燥や炎症によって粘膜がガサガサに荒れてしまえば、免疫力は低下してしまいます。
そこで、粘膜のうるおいを保つためにはどうしたらよいのか、インドの伝統医学アーユルヴェーダを診療に取り入れている、耳鼻咽喉科の医師である北西剛さんに話を聞きました。
粘膜を荒れさせる要因は複数あり、適度に湿った「うるうる粘膜」を維持するためのルールを紹介します。
ストレスが減れば心も粘膜もうるおう
ストレスが高くなると唾液の分泌が減って口のなかが乾燥し、口中環境が悪化するため、ストレスを減らし粘膜も強化してくれる変わった方法を紹介します。
【粘好きな曲の鼻歌で、心も粘膜もうるうるに。】
交感神経が優位だと口のなかが乾く。
ストレスは免疫力の低下を招きますが、その理由のひとつが、自律神経が乱れるからです。
興奮や緊張を引き起こす交感神経が優位だと唾液の分泌が減少し、心身をリラックスに導く副交感神経が優位だと唾液の分泌が促進されます。つまり、ストレスによって口やのどの粘膜が乾燥するのです。
そのため、適度な運動をするといった気分転換が必要ですが、コロナ禍では、テレビやネットで飛び交う真偽不明の情報に不安をあおられる人が少なくありません。そのためテレビを消し、必要な場合を除いて携帯電話やスマートフォンを使わないなど、適度な情報断ち、いわゆるデジタルデトックスも有効です。
また、ストレス対策の一環で北西さんがおすすめなのが、人と人とのつながりです。
「実は、人間のカラダにはストレスで活性化して粘膜に慢性炎症を引き起こす遺伝子群が存在します。その遺伝子群を抑制するのが、他者とつながることで得られる満足感ということがわかっています」
ただし、実際に相手の顔を見ながら言葉を交わすようなつながりでなければ有効ではないそうです。
「また、鼻歌やハミングの振動は鼻の粘膜の血行を促し、粘膜の毛細血管を強化する効果があります。そうした意味では、鼻歌やハミングが免疫力をアップすると言ってもよいでしょう。好きな曲ならストレス解消にもなりますしね」
1.あえて他人とコミュニケーションをとる。
●特に感謝されると、免疫力がアップ。
家族や親しい友人だけでなく、まったくの他人とのつながりでも、粘膜に慢性炎症を引き起こす遺伝子群を抑制する効果がある。
2.好きな曲を鼻歌やハミングする。
●「音楽の力」は本当にあった!
最近の研究で、ハミングや鼻歌で鼻の粘膜の一酸化窒素量が増加する(=血管が拡張して、血流量が増える)ことがわかっている。
『Dr.クロワッサン 感染症に負けない、カラダをつくる。』(2020年11月30日発行)より。