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「腸ストレッチ」で自律神経が整えば、認知症もロコモも予防できる。

腸と脳は互いに補い合う対等な臓器です。腸が自律神経を整える驚きの関係と、理想の腸の状態、健腸のメリットを順天堂大学医学部教授、小林弘幸さんに伺って紹介します。
  • 文・韮澤恵理 イラスト・安ケ平正哉 撮影・青木和義

腸ストレッチの抗加齢効果

● 腸ストレッチで腸の働きがアップ。
腸が動き、腸内環境がよくなると腸から脳に向けて、「腸の調子はOKです」という情報が送られる。

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● 自律神経が整う。
脳は腸からの「快調」という情報を受け取ると安定し、自律神経のバランスがとれ、全身に管理の目が行き届く。

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● 血流がよくなる。
交感神経と副交感神経のメリハリがつき、特に副交感神経が優位になると血管が拡張し、血流がよくなる。

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● 全身に血液が届く。
血流がよくなると酸素や栄養素がしっかり細胞に届けられ、代謝や再生が順調になり、細胞がいきいきとする。

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● 認知症もロコモも遠ざかる。
脳や筋肉の細胞が元気なら、脳細胞の死滅や、筋力の衰えも予防でき、いくつになっても認知症やロコモと無縁。


自律神経が整うと、良い睡眠がとれる、メンタルが整う、胃腸をはじめ、さまざまな臓器の不調が改善されるなど多くのメリットがありますが、なかでも血流がよくなることに小林さんは注目しています。

「交感神経が優位すぎると、血管は収縮し、血流が悪くなります。逆に副交感神経が優位すぎても血管の収縮筋がゆるみ、血管が拡張して血流が悪くなる。自律神経のバランスが良いと血行が整い、細胞に十分な酸素や栄養素を届けられるようになります。内臓はもちろん、皮膚や筋肉など全身の組織が活性化しますよ」

不調が直るだけでなく、肌のターンオーバーを正常化したり、筋肉を維持したり、頭皮の血行改善で髪も元気になるなど、効果は絶大。アンチエイジング効果もあるといいます。

「血管は40代くらいから衰え始め、生活習慣や運動不足で血流はぐんぐん落ちていきます、それを食い止められるのが自律神経の調整です」

血管の収縮と拡張をコントロールできるのは自律神経だけです。交感神経が優位な生活を続けている人は、マッサージをしても、血行がよくなる食材を摂っても一時的なもので、根本的な改善にはなりません。

「血流不足が続くと、やがて毛細血管自体が減ってしまいます。すべての細胞は血液から酸素や栄養素を得ているので、血液が供給されなければ脳はもちろん、体の各部の細胞が減り、これが老化につながります」

逆に血流をよくしておけば若さを保てるということです。

認知症の一因は脳の血流不足。 血行がよくなれば予防できる。

平均寿命が90歳近くなった昨今、寿命のほかに健康寿命という言葉を耳にします。平均寿命と健康寿命の差が、人の手助けを受けなければ暮らせない期間で、平均10年もあるというのです。その二大原因は認知症とロコモティブシンドロームによる転倒、骨折です。

特に心配なのは、認知症という人が多いようですが……。

「どちらも血流をよくすることで予防することはできます。特に認知症は脳細胞の健康維持が必須ですから、血流が悪い人は要注意ですね。アルツハイマー型認知症はまだ不明な点も多いのですが、脳血管性認知症でいえば、脳内の血流が悪くなると脳細胞に血液が届かず、その先の脳細胞が死んでしまうことが原因なのははっきりしています」

自律神経は末端の細い血管の収縮と拡張に大きく影響するので、きちんとバランスをとり、脳に血液が十分に届くようになれば、脳血管性の認知症を防ぐことができそうです。「血流がよければいくつになっても脳は元気です。私の父はすでに80代ですが今でも子どもたちに勉強を教えています」と聞くと心強いです。

【脳血管性認知症の始まり】脳の毛細血管の血流が悪くなると、その先の脳細胞が死んでしまい、小さな梗塞ができるこれが認知症の原因に。

筋肉不足は寝たきり予備軍。血流をよくして筋肉を増やす。

要介護の原因のもうひとつが転倒などによる骨折です。特に大腿骨(だいたいこつ)を骨折すると寝たきりになる率は非常に高いとされます。

「ロコモティブシンドロームは正式には運動器症候群と呼ばれ、筋肉や関節、骨などが衰えて運動能力が低下した状態です。進行すると立ったり歩いたりする日常の動作が行えなくなり、介護が必要になってしまいます。でも、これもちょっとした努力で予防できます」

転倒して骨折してしまうのは、筋力の低下と骨がもろくなる、いわゆる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が原因ですが、どちらも自律神経や血流に関わるのだといいます。そのメカニズムを尋ねると、

「筋肉は運動によって増やすことができる組織ですが、筋肉を維持するためには十分な血液が届くことも大切です。骨も同様で、骨を構成するタンパク質やカルシウムも血液によって運ばれていきます。さらに、その栄養素は腸から吸収されるので、腸の健康がダイレクトに寝たきり予防につながる可能性も大きいです」

まず大切なのは、しっかり動ける体です。転倒の原因の一番は、体のバランスがとれずにつまずくことで、足を上げる力、つまずいても転ばないバランス力を維持したいもの。

「腸のために行うストレッチやスクワットは、筋肉の強化や柔軟性アップにもつながります。呼吸法は腹筋や体幹の強化にも有効です。腸活歩きを毎日続ければ、心肺機能の衰えを防ぎ、下半身の健康維持に役立ちます。いくつになっても筋肉も血管も増やせるので、今日から始めても遅くはありません」

こうした習慣の積み重ねがロコモ予防にも役立つそう。同時に血流アップで増えた筋肉に十分な血液を届けられ、アンチエイジング効果は上がっていきます。

若さの秘訣は心の元気と体の元気。決め手は腸と自律神経。

「自律神経が整うことでメンタルも安定し、前向きになることも大きいですね。年齢に縛られず、ポジティブというのも若さの秘訣です」

確かに、お年寄りの引きこもりや孤独が認知症やロコモの原因になるというデータがあります。

「腸が正常に働くと血液の質がよくなることも見落とせません。質のいい血液はサラサラとスムーズに流れ、良い成分を運んでいますが、腸内環境が悪くなったり、腸の動きが鈍って便秘になると、老廃物や、悪玉菌が生み出した有害物質が排泄されずに腸内に溜まり、腸壁から血液に逆戻りすることも。こうなると肌が荒れたり、内臓にも負担がかかります。不健康は老けて見える原因です」

腸を整えれば自律神経も整い、血流が上がり、若々しくなります。

「おおげさではなく、腸の健康は人生も変えます。脳は思っているほど優秀な組織ではありません。脳だけに頼るのではなく、まず腸を健康にすることで、体全部を変えていくことが健康長寿の近道です」

病気にならないため、老けないためといろいろな健康法にチャレンジするのもいいけれど、まず、腸を健康にする運動や食事で、自律神経や血流を整えることが、体全体のコンディションを上げ、気持ちも元気になる秘訣でした。

小林弘幸

監修

小林弘幸 さん (こばやし・ひろゆき)

医師

順天堂大学医学部教授。日本体育協会公認スポーツドクター。
日本初の便秘外来を開設し、著名人のコンディショニング向上などにも関わる。自律神経の権威としても名高い。著書に『自律神経が整う時間コントロール術』(小学館)、『医者が考案した「長生きみそ汁』」(アスコム)など多数。

『Dr.クロワッサン 名医が教える腸ストレッチで、自律神経はよみがえる。」(2019年1月15日発行)より。

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