認知力が向上する!?『Lumosity:毎日の脳トレゲーム』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
簡単に言ってしまうと「脳トレ」ゲームアプリ。認知科学に基づいたこのゲームを一日三回行えば、脳が活性化され、記憶力や注意力などの認知力が向上するという。
ゲームは三十種類以上あるが、記憶力を試すゲームが多い。
例えば海辺で物を選んでゆくゲームがある。同じアイテムを二度選んではいけないというルールで、画面には貝殻、パラソル、魚、海老、ヤドカリ、ヨット等々の『海浜アイテム』が登場する。最初の画面には一度に三つしか登場しない。一つ選ぶと、次の画面には前に選んだアイテムを含め、五個登場する。その中から別のアイテムを選ぶと、次は七個、次は十個……と、画面に登場するアイテムがどんどん多くなる。
一度に十数個のアイテムを見せられると、自分がこれまでに何を選んだか記憶が怪しくなって、ついに『お手つき』してしまう。
このゲームアプリで認知力が向上するかどうかは分らないが、私は普通にゲームとして面白かった。
実は一番苦戦したのが、画面の上下に色を示す漢字が出て「上の意味と下の色が合っているか?」を当てるゲーム。漢字が上下とも「黒」であっても、下の字の色が黒でないと「いいえ」。下の字が「赤」でも色が黒ければ「はい」。これは出題の意味を把握するまで時間がかかった。
結局、基本は「国語力」だと痛感した。物理も数学も、問題の意味を正確に理解出来なければ、正しい答は出せない。小学生は英語を教える前に、読書させた方が良いと思う。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最愛の母と過ごした最期の日々を綴ったエッセイ『いつでも母と』(小学館)。
『クロワッサン』1028号より
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