更年期でつらそうな同僚、どう声をかけていいかわからず、悩んでいます。【87歳の婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】
撮影・岩本慶三 イラストレーション・小迎裕美子 構成・越川典子
Q. 更年期でつらそうな同僚、どう声をかけていいかわからず、悩んでいます。
同期の女性が、更年期障害でとてもつらそうなのです。私自身は2年前から治療を始め、ホルモン補充療法(HRT)と漢方薬とを併用しているのですが、彼女にすすめていいものかどうか、迷っています。実は、以前、他の友人にHRTをすすめたところ、ひどく怒ってしまったことがありまして……どうしたものかと悩んでいます。更年期障害がひどくて、会社をやめてしまった友人もいます。(F・Mさん 54歳 会社員)
A. 伝えたほうがよいとご自分が感じたら丁寧に話しましょう。
F・Mさんのご質問を読んで思い出すのは、30年も前のことです。雑誌やTVや講演で更年期医療の話をするたびに、「ホルモンなんてとんでもない!」 「それ、怖くないの?」と質問がとんできた時代でした。
いまでは、HRTという言葉もずいぶん認知されてきていますが、それでも、更年期障害はとてもデリケートな話題です。よかれと思ってした話で感情を害する人がいても不思議ではありません。その人が更年期そのものをネガティブにとらえていたとしたら、否定したくなるのも人情かもしれません。
あるいは、いま感じている不調は「仕事が忙しいせい」「寝不足だから」と、更年期とは異なるところに原因を求めようとしている場合もありますね。だから、治療の対象だとは思っていない。下の円グラフを見てください。実際に、更年期世代で体調の変化を自覚していても、医師の診察を受けた人は、たったの16%という調査があります。84%が未受診というのです。
医師の診断の有無(世代間比較)
[ プレ更年期世代 ]
[ 更年期世代 ]
F・Mさん、もし、同僚の方を大切に思っているのだとしたら、「実は、私も似たようなことがあったの」とご自身の治療体験について話してみてはいかがでしょう。私は、40代で親友を乳がんで亡くしています。ですから、家族や友人に心配なことがあったら必ず声をかけます。声をかけなかったことを後悔したくないのです。
コツは、ひとつ。アドバイスをしてはいけない、ということ。「〇〇がいいわよ」 「こうしたらいいのよ」は、押しつけに聞こえます。更年期という言葉だけで傷ついてしまう人もいます。また、症状は百人百様、実にさまざまです。F・Mさんの体験が、同僚の方に当てはまるかどうか、誰にもわかりません。あくまで寄り添う気持ちが大切です。
このページを読んでくださったあなたも、誰かから心配されているかもしれません。そう思ったら、オープンマインドでいることです。心を開くほど、情報が入ってきますし、生きるのもラクになります。
※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。
正しい情報は、大切な人と共有しよう。(Dr.野末)
野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、久地診療所初代所長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などを歴任。
※表の出典は、「働く女性の健康に関する調査結果レポート ~更年期症状を中心に~」(2018年 ドコモ・ヘルスケア調べ)
『クロワッサン』1024号より
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