骨粗鬆症や骨折などを未然に防ぐための方策、磯野貴理子さんが専門医に聞きました。
撮影・岩本慶三 スタイリング・繁田美千穂 ヘア&メイク・anna 文・一澤ひらり
「ちょっとぶつけただけなのに、足の小指を骨折してしまって…。」磯野さん
「脆弱性骨折かも。50代女性の典型的骨粗鬆症の骨折です。」加藤さん
女性は閉経後、50代で10%、60代では30%、80代では60%の人が骨粗鬆症になるといわれている。その予防、改善に取り組む内科医の加藤朋子さんに、「将来がちょっと不安」と心配するタレントの磯野貴理子さんが、骨の健康維持に必要なことや、効果的な運動・食事について聞きました。
磯野貴理子さん(以下、磯野) 女性が高齢になるにつれて骨折しやすくなったり、骨粗鬆症になったりするのはどうしてなんでしょう。
加藤朋子さん(以下、加藤) 骨というのは新陳代謝をしていて、日々生まれ変わっています。破骨細胞によって古い骨が壊されて、骨芽細胞が血液中のたんぱく質やカルシウムから新しい骨を作ります。女性ホルモンのエストロゲンはこの骨の形成を助け、骨の破壊を抑制する働きがあるんです。更年期になってエストロゲンの分泌量が減ると、骨破壊のスピードが骨形成のスピードを上回ってしまい、どうしても骨量が減少してしまうんですね。
磯野 女性ホルモンと骨量にそんな関係があるなんて思ってもみませんでした。ということは、私のような更年期を迎えた女性の身には必ず降りかかってくる現象なんですね。
加藤 そうなんです。女性の骨量のピークは18歳頃で、40歳代前半くらいまではほぼ変わりませんが、更年期になってエストロゲンが減少すると骨量が急激に減っていきます。閉経後、10年間で15~20%も減少するといわれています。これは50歳以上の女性が直面する大きな健康問題です。
磯野 骨って目に見えないから意識しにくいんです。でもちゃんとケアしないとダメなんですね。
加藤 骨粗鬆症の「鬆」の字は「す」とも読みます。大根やごぼうに「すが入る」といえば、芯に細かな穴が開くことを意味するように、骨がスカスカの状態で、もろく折れやすくなってしまうんです。さらに、あごや頰骨、眼窩など、顔面の骨も萎縮していきます。そうすると皮膚がたるんでシワができるし、目も落ちくぼんできます。
年齢に伴う骨量の変化
骨が折れやすいだけじゃない。体の老化も早くなる骨粗鬆症。
磯野 えーっ、骨が縮んでたるみやシワができてしまう!? 骨量の減少が美容にまで関わっているなんてショック。老け顔になっちゃうのはそのせいでもあったんですね。
加藤 骨粗鬆症の進行は全身の老化も早めます。ただしその原因は加齢や更年期だけでなく、糖尿病、甲状腺疾患などの代謝異常、無理なダイエット、運動不足、喫煙などさまざまです。
磯野 私、数年前に足の小指を骨折しているんですよね。自宅で机か何かにちょっとぶつけただけなのにポキッと折れちゃったんです。
加藤 もしかすると脆弱性骨折かもしれませんね。骨が弱っていてちょっとした刺激で折れてしまう、骨粗鬆症の代表的な骨折です。
磯野 うわー、どうしよう!
加藤 骨が弱くなると、まず50代で転んで手をついて手首を骨折し、60代では「いつのまにか骨折」といわれる背骨の圧迫骨折、70代以降になると大腿骨を骨折しやすくなるんです。
磯野 ヤダ、ヤダ! それだけは避けたいです。私、80歳になってもスタスタ歩いていたいんですよね。何か手立てはあるんでしょうか。
加藤 まず骨密度を検査して、自分の骨量を把握することが基本です。でも安心してください。骨の細胞は常に入れ替わっていて5カ月ほどで新しくなります。いい骨にしていけばいいし、薬もあるので、骨は何歳でも強くすることができます。
磯野 それを聞いてホッとしました。私もいまの自分の骨の状態をちゃんと知りたいです。
磯野貴理子(いその・きりこ)さん●タレント。1964年、三重県生まれ。テレビのバラエティ番組やドラマ、舞台で活躍。現在、『はやく起きた朝は…』(フジテレビ系)、
『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)などに出演中。
加藤朋子(かとう・ともこ)さん●とも内科クリニック院長。山梨大学卒業。医学博士。骨粗鬆症認定医。糖尿病や骨の治療を続ける中で健康長寿には骨が大切と、糖尿病と骨粗鬆症を専門に東京・世田谷区に「とも内科クリニック」を開院。
『クロワッサン』1016号より
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