歯ぐきに舌、粘膜も。口の疾患が全身の疾患を招く原因に。
正しい知識をもとに、今よりもっと大事にしましょう。
撮影・中島慶子 文・一澤ひらり、板倉みきこ 撮影協力・メゾン・デ・ペルル
今後は8020ではなく、100歳で28本を目指す。
自分の歯を長く残すことが健康長寿の秘訣ということで始まった“8020運動”。80歳で20本の歯を残すのが目標だったが、人生100年時代の今、100歳で28本を目指したい。歯科医の坂本紗有見さんによると、
「健康を維持できていなければ、長生きはむしろ苦痛になってしまうことも。100歳まで自分の歯でものを食べられることは、心身のすベての健康やQOL(クオリティ・オブ・ライフ)に関わる大切なことなんです」
そのために必要なのは定期検診。
「虫歯や歯周病など口腔内のトラブルは予防が功を奏します。不具合が起きてからではなく、数カ月に1度、メンテナンスを兼ねた検診を受けましょう」
歯ぐきや舌、粘膜もきちんとケア。全身に思わぬ影響が及ぶことも。
虫歯や歯周病を放置すると歯を失うことにつながり、様々なトラブルを招くのはご存じのとおり。
「でも、口腔内の健康に影響するのは歯だけではありません。歯ぐき、粘膜、舌なども大切。噛み砕く(咀嚼)、飲み込む(嚥下(えんげ))、滑舌、咬合(こうごう)力、舌圧、唾液の分泌など、口腔の様々な機能が低下することで健康に害が及びます」
特に、妊娠時や更年期に女性が罹患しやすい歯周病の怖さを知ってほしい。
「歯周病菌が歯ぐきから侵入することで、糖尿病や高血圧、認知症、脳卒中などの全身疾患の原因となります。小さな歯ぐきの変化にも敏感になり、適切なケアを行ってください」
老化は口から!? 予防ケアで口腔内の悪循環を断つ。
歯の状態が悪いとしっかり噛めない。柔らかいものばかり食べるから、栄養が偏る。その結果生活習慣病を発病し、最悪な場合は寝たきりになることも。こうした悪循環は“オーラルフレイル”(口腔の虚弱)と名付けられて注目を集め、2018年には「口腔機能低下症」という病名も認められた。
「老化は口から始まる、と考えて、歯、歯並び、歯ぐき、粘膜の状態、口腔内の菌の種類や顎の骨格などもチェックして、自分の口腔内の現状を正しく知りましょう。その結果に応じて適切なセルフケアを学び、歯科医院でのプロのケアも取り入れれば、トラブルの予防ができ、口腔機能も向上できます」
オートクチュール刺繡の技法を使って作られたビーズのアクセサリー。髭ブローチ 参考商品、歯ピアス1万2500円、唇ブローチ1万5000円(以上モーココバヤシ/メゾン・デ・ペルル TEL.03-6416-8644 https://maisondesperles.com)
『クロワッサン』1016号より
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