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口が渇いてしかたありません。食べ物を飲み込みにくく、不快感が続いています。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

イラストレーション・小迎裕美子 撮影・岩本慶三 構成・越川典子

野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医
野末悦子さん 産婦人科医師、久地診療所婦人科医

Q. 口が渇いてしかたありません。食べ物を飲み込みにくく、不快感が続いています。

54歳です。1年前から口が渇くように感じ始め、最近では食べ物が飲み込みにくいことも。そのせいかわからないのですが、家族から料理の味が塩辛くなったと指摘されました。閉経は2年前です。40代半ばから血圧が高めで、降圧剤を処方されています。口の渇きも我慢できないほどではないのですが、このまま放っておいていいものなのか。悪化してしまうこともあるのでしょうか。(S・Hさん 54歳 自営業)

A. 更年期症状だけでなく、ドライマウスの原因は ひとつではありません。

口の中が渇くという訴えは、更年期の女性にはよく見られます。口だけではなく、目や膣などの粘膜組織が乾燥する「ドライシンドローム」は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少が原因です。とくに「ドライマウス」と呼ばれるものの主な症状には――

□ 口が渇く
□ 口中がネバネバする
□ 舌が痛い
□ 口臭が気になる
□ 食べ物が飲み込みにくい
□ しゃべりにくい
□ 味がわかりにくくなった

などがあります。

閉経後2年というS・Hさんの症状は、更年期由来とも考えられますので、ホルモン補充療法(HRT)などの治療を始めれば症状の軽減が期待できるでしょう。

ただ、他の病気が隠れていることがあるので注意が必要です(下図参照)。気をつけるべきは、糖尿病や腎臓の疾患。定期的な健康診断は欠かさないようにしてくださいね。

ドライマウスは原因が複数の場合もある

ドライマウスは更年期症状のひとつだが、ほかにも原因があり、それが複数絡み合っていることも多い。トータルにチェックする必要が出てくる場合もある。
ドライマウスは更年期症状のひとつだが、ほかにも原因があり、それが複数絡み合っていることも多い。トータルにチェックする必要が出てくる場合もある。

もし、口の乾燥以外にも、目の乾燥、関節の痛み、疲れ、だるさなどがあるようなら、シェーグレン症候群の可能性があります。これは、免疫システムの異常で自分を攻撃してしまう自己免疫疾患、膠原病(こうげんびょう)の一種。唾液腺や涙腺の組織が破壊されてしまうため、口や目が乾燥してしまうのです。圧倒的に中高年の女性に多いのも特徴です。受診する場合は、膠原病・リウマチ内科に行くといいでしょう。

また、ドライマウスの症状が続くと、口腔内の環境が悪くなり、虫歯や歯周病がすすむこともあります。気になる症状がある場合は、一度、歯科・口腔外科、ドライマウス専門外来などを受診して、唾液分泌能をチェックしておくと安心ですね。下図のように唾液腺を刺激したり、よく噛んで食事するよう心がけましょう。

唾液分泌を促すポイントをマッサージ

薬などによる治療も必要だが、図の部分を手指でマッサージすると、唾液分泌を促すことができる。
薬などによる治療も必要だが、図の部分を手指でマッサージすると、唾液分泌を促すことができる。

※症状や治療法には個人差があります。必ず専門医にご相談ください。

更年期症状に病気が隠れている場合もある。(Dr.野末)

口が渇いてしかたありません。食べ物を飲み込みにくく、不快感が続いています。【87歳の現役婦人科医師 Dr.野末の女性ホルモン講座】

野末悦子(のずえ・えつこ)●産婦人科医師、久地診療所婦人科医。横浜市立大学医学部卒業。川崎協同病院副院長、コスモス女性クリニック院長、介護老人保健施設「樹の丘」施設長などをへて現職。

『クロワッサン』1016号より

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