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【近藤史恵さんインタビュー】「自分の内側に深く潜って書いた」という渾身の心理サスペンス『インフルエンス』

女の友情全てがもろいわけではないんです。

こんどう・ふみえ●1969年、大阪府生まれ。大阪芸術大学卒業。’93年『凍える島』でデビュー、鮎川哲也賞受賞。デジタル小説誌『digital PONTOON』で、「飛べ、走るように」を連載中。14歳のトイプードルと暮らす。

撮影・千田彩子

「女清掃員・キリコ」「整体師・合田力」「猿若町捕物帳」「ビストロ・パ・マル」など、さまざまな職業の名探偵たちによる、軽妙で洒落たミステリーを得意とする近藤史恵さん。最新作は「自分の内側に深く潜って書いた」という渾身の心理サスペンスだ。

大阪郊外の巨大な団地に住む小学生の友梨は、同じく団地に住む里子と仲良くなる。あるとき里子が語った、「寝るときはおじいちゃんと一緒」というひと言に衝撃を受けるが、周りの大人はいぶかるだけで何の行動も起こさない。大人に対して不信感を募らせながらどうすることもできない友梨。里子からは、誰かにしゃべったら殺す、と脅され、疎遠になってしまう。そして中学に入って仲良くなったのは、都会の雰囲気を漂わせる美少女の真帆。ある夜、真帆が団地内で暴漢に襲われるのを目撃し、友梨はとっさの判断で男を刺し殺してしまった。3人が成長し、20年後に再会することで、それぞれの人生は思わぬ方向に進んでいく。

「子どもの頃仲良しでも、ずっと友だちでいることは多くないかもしれない。でも、大人になってまた友人関係が復活することもあるんじゃないかと。女性の友情の全てがもろいわけではないと思います」

大きなテーマとして性暴力とどう向き合うかが描かれる。

「最近、日本の女性が置かれている環境について、おかしいと思うことが多くなりました。女性がお酒を飲みに行ったとき、『夫はひとりでご飯作って食べている』と言うと『あら、かわいそう〜』と言う人がいる。何よりも性暴力に遭ったとき、男性側の目線に立つ人が女性にも多い気がするんです。夜遅くに一人で歩いていたからとか、そんな格好をしていたからとか。自分から誘ったんじゃないの?と聞く人までいる。被害を訴えたらそれを抑圧しようという声がとても多いと感じます。被害をすぐに訴えられないのも問題です」

身に降りかかる暴力被害を他人の力に頼らず、自分たちだけで解決していこうとする3人。その方法は決して正しくないのだが、丁寧な心理描写によってぐいぐいと引き込まれてしまう。

「嫉妬とか執着とかネガティブな部分を飲み込んで共有して乗り越えていかないと女性の連携は難しいのかもしれません。でも人生にさまざまな問題を抱えていても、自分は孤独ではないと思えるのは友だちという存在があるからだと思います」

文藝春秋 1,500円

『クロワッサン』966号より

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