『犬が来る病院 命に向き合う子どもたちが教えてくれたこと』大塚敦子さん|本を読んで、会いたくなって。
子どもたちから教わる “死との向き合い方”。
撮影・森山祐子
聖路加国際病院(東京・中央区)は、2003年に日本で初めて小児病棟にセラピー犬の訪問を受け入れた医療機関。本書は、大塚敦子さんが小児がんなどの難病と闘う子どもたちとセラピー犬が交流する姿を追った写真絵本『わたしの病院、犬がくるの』(岩崎書店、2009年)を上梓してから、再び同小児病棟を取材し、一冊にまとめたものだ。
「前作の写真絵本は、難病を抱えながらも学校に復帰する子どもを迎えるクラスメイトたちが、病気や治療のことを知り、その子の気持ちに共感できるよう教育的な意味合いを持たせ、いろいろな読み取りができるようにしました。その後、小児病棟で出会った子どもたちや親御さん、医療スタッフとの交流を続けているうちに、“それからどうなったのか”を文章で丁寧に伝えたいという気持ちが強くなっていたんです」
本書は、大塚さんが親しく交流した4人の子どもたちを中心に綴られている。2人は幼くして世を去ったが、2人は退院して小児科医と臨床心理士を目指すなど、前向きな人生を歩み始めている。
「小児病棟の子どもたちは、自分の置かれた境遇を察しているのか、普段、不自然なくらいにわがままを言わず、いい子にしているんです。でも、セラピー犬が来るときだけは、子どもらしくはしゃいで硬さがほどける。その笑顔がいじらしくて……。中でも、白血病に侵された“ちぃちゃん(千歳ちゃん・享年7)”は、セラピー犬への気遣いが感じられて、最初、犬を飼っている子かな?と思ったほどでした。成熟した魂の持ち主というか、今でも私たちに“死との向き合い方”を伝えるために生まれてきた、特別な子どものような気がしています」
子どもたちの与えられた試練を目の当たりにしていると、日常の些細な事がどうでもよくなる、と大塚さんはいつも感じたそうだ。
「胸が張り裂けそうになったことも度々ありましたが、この子たちと出会い、短い人生や大切な時間に側に居させてもらえて本当によかったと思っています。残された親御さんや家族も喪失を乗り越えようと頑張っていますし、医療現場におけるスタッフの努力や悩みも共有できて貴重な体験でした」
子どもの病や死というテーマゆえに読むことをためらう人も多いかもしれない。でも、フォトジャーナリストとして真実を伝えることで、「誰もが希望の持てる本にしたかった」と語る大塚さん。
読み終わった後に、すーっと魂が浄化されるような良著だ。
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