【前編】更年期と上手につきあう美容法。
撮影・岩本慶三 ヘア&メイク・木下庸子(プラントオパール) 文・大崎京子
チャーミングな笑顔と、透き通る肌が印象的な吉川千明さんだが、かなり長いこと更年期のトラブルに苦しんだ。
「最初の症状は38歳。不正出血に始まり、関節の痛みや、のどのつまり、不眠やめまい……。当時はこれがプレ更年期の症状だと思わず、不安だらけでした。路地を歩くと家がパタパタと倒れる妄想に陥ったり、電車に乗るのも怖かったりーー」
病院で様々な検査をしても異常は見つからず、つらい日々が続いた。
「当時は、仕事も家事も忙しく、無理して頑張り、心と体が悲鳴をあげていたんですね。でもちょっとしたきっかけから低用量ピルを勧められて服用してみると、少しずつ症状が緩和していったんです。気持ちに余裕が出てからは、アロママッサージなどの、セルフケアを取り入れるようにもなりました」そして45歳で本格的な更年期に突入。
「肌が乾燥して、粉を吹くほど悪化しました。お寿司屋さんで、私が何気なく頬を触ったら、めくれ上がった皮膚が白い粉になって黒塗りのカウンターにハラハラと舞ったんですよ(笑)」
美容家という立場なのに、シミやくすみがひどく、ファンデーションの厚塗りで隠していた、と話す。内面も、「弱い自分を見せたくないと、働きづめ。黒い服しか着ない、趣味もない、友だちと旅行にも行かないなど、とにかくカラに閉じこもっていましたね」。
それが一変したのが47歳。極度のストレスから、カウンセリングを受けたところ、「本当のあなたは、癒やし系で楽天家。オレンジ色が似合う」と言われて驚いた。
「それがきっかけで、ふっきれて。パステルカラーの服を買おう、着物で歌舞伎を見に出かけてみよう、と気持ちが前向きになりました」
そして現在、57歳。「今が一番、充実していて楽しい」と語る吉川さん。自身の経験を生かし、メノポーズ(閉経)・カウンセラーの資格を取得。「女性ホルモン塾」を定期的に開催している。
「更年期は誰にでも訪れるものです。体と心の変化にとまどいがちですがネガティブにとらえず、できることからひとつずつ。スキンケアやメイク法をちょこっと工夫したり、アロマの力を借りて上手に乗り切ってほしいですね」
寝付けない夜はアロマの香りでリラックス。
更年期は気持ちが不安定になり、眠りが浅くなりがちだ。「実際、私もなかなか寝つけず、目が覚めると、しばらく眠れない。ベッドの上でヒザを抱えて、クヨクヨと悩む時期がありました」と吉川さん。そんな時は、安眠を誘うロールオンタイプのアロマがおすすめだ。「ジャスミンやローズの香りは、もやもやした心を鎮めます。リラックスできますよ」
イライラを鎮めるなら、朝晩のリズムを整える。
気持ちのコントロールができなくなり、ワケもなく落ち込んだり、イライラする……これも更年期特有の症状だ。「心と体のバランスがくずれているので、リズムを整えることが大切。朝はローズマリーなど爽快感のあるアロマオイルでリフレッシュ。夜はカモミールの入浴剤でリラックス。メリハリをつけることで、イライラや感情の起伏がすっとおさまります」
手足や腰が冷える時は、アルニカ™で体を温める。
更年期は体温調節をつかさどる自律神経が乱れることから、冷えを感じる人が増えてくる。「冷えて仕方がない時、役立つのがハーブのアルニカ。菊科の植物で、疲労を和らげ、血行を促す働きを持っています。アルニカのバームでこわばった肩をほぐしたり、手足を心臓に向けてマッサージすると、ぽかぽかに」また、アルニカの入浴剤も、体を芯から温めてくれる。
乾きがちなデリケートゾーンは、専用ケアを。
潤いを保つ女性ホルモンの量が減ると、全身が乾燥する。特にデリケートゾーンは、体の中で最も敏感なので、カサつきやかゆみが起きやすい部分だ。「最近はデリケートゾーン専用のオーガニックケアが登場しています。ソープで優しく洗い、ローションで潤いをプラス。刺激に弱い肌をいたわりながら、手入れをすることで、乾燥の悩みから解放されます」
『クロワッサン』944号より
●吉川千明さん 美容家、メノポーズ・カウンセラー/美容、食、漢方、女性医療など、さまざまな角度からナチュラルなライフスタイルを提案。「女性ホルモン塾」のセミナーも行っている。
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