ビューティー

ビューティ対談②|ポジティブな考えが美しさを作る。

大切なのは「どう若く見せるか」ではなく、「どう生きていくか」です。大人の美容の根底にあるテーマ、お届けします。
  • 撮影・青木和義 スタイリスト・春原久子(倉田さん、津田さん)、佐藤智春(黒川さん) ヘア&メイク・遠藤芹菜(倉田さん)、尾花ケイコ(津田さん) 文・石飛カノ

人間の脳は 56 歳で完成する。人生の楽しみはこれから。

40代、50代になっても若々しい人と、そうでない人の違い。つまり「年齢から自由な人」と「おばさん」の違いとは? 美容ジャーナリストの倉田真由美さん、脳科学コメンテーターの黒川伊保子さん、皮膚科医の津田攝子さん、同年代の3人にそれぞれの立場から語り合ってもらいました。

写真左から美容ジャーナリストの倉田真由美さん、脳科学コメンテーター黒川伊保子さん、皮膚科医の津田攝子さん。

編集部 黒川さんは40代のとき、老いることへの恐怖のようなものはなかったんですか?

黒川伊保子さん(以下、黒川) ありました。43歳くらいのとき。老いることをすごく怖がっていて、このままジリ貧で落ちていって何もかもなくなるのかと思っていたら……とんでもない。今は楽しくてしようがないです。というのも脳科学的には脳が完成するのは56歳と言われているからなんです。

倉田真由美さん(以下、倉田) まさに私たちの年齢ですね。

黒川 そう。脳を装置とすると、人生最初の28年は入力装置、次の28年は脳のどの回路を使うか優先順位をつける装置、そして56歳で装置は完成し、その先は出力性能最大期に突入するんです。

津田攝子さん(以下、津田) 出力性能最大期?

黒川 ものごとの本質をすぐに見抜き、正解を出力する力が増すんです。60代に入ると抽象的なものからも本質を認知する力がさらに上がり、野に咲く花に人生の秘訣を見いだすこともできるようになります。能とか古美術といった文化がすとんと腹に落ちるようになるのも、この年代から。

津田 なるほど。そういうふうにこれから一番いいときを迎える、楽しいときを迎えられると理詰めで言ってくださるととても心強いし、元気が出てきます。でも、一般的に女性がどうして老いを怖がるかというと、周りから女性扱いされなくなることがショックだからという声もよく聞きます。

黒川 日本にはヨーロッパのようなマナーがないですからね。私は周りの男性に、座るときはいつも椅子を引いてもらうし、コートも着せていただきます。私が当たり前のように要求するので、仕方がないからやってくれているのかもしれない。周りは、もうマダムとして扱うしかないねと。でも相手の動機はどうでもよくて、そうやって女性として扱われるってすごく大事なことだと思うんです。扱われているうちに自分の中にも女らしさが出てきますし。

倉田 そうですよね。女扱いされないからショックという人は、もしかしたら黒川さんみたいに女らしくしていないかもしれない。

津田 黒川さん、見かけはどうでもいいようにおっしゃるけれど、黒川さん自身は笑顔も立ち居振る舞いもとてもチャーミング。日本にいるヨーロッパのマダムみたいな方だから、すごくレアな存在なんです。自分に自信をもって、これからの脳にとてもいいことがあると期待感をもって前向きに生きている。でもそういうふうに生きられない人が一般的にはとても多いんですよ。

黒川 そうなんですね……。だったら男性をなんとか教育したほうがいいかもしれませんね。

津田 黒川さんみたいに上手に男性を教育できる女性を増やしていくには、どうしたら?

「女性として扱われる 所作を脳に貯金すれば 女っぷりが上がります」と黒川さん。

黒川 う~ん、教育というか、歳をとってくると介護かエスコートかわからなくなるから得なんです(笑)。ちょっと女扱いされたいなというとき、階段を下りるとき、上で手を出して待っていることがあるんです。そうすると周りの男性が手を差し出してくれるんです。

津田 それは黒川さんだからですよ。

黒川 違います違います。だってそのときに〝これは介護だからね〟と言われるんですから(笑)。それでもいいんですよ。自分の年齢を遊んでしまえば。

倉田 私、飛行機に乗ってキャリーバッグを収納スペースに入れるとき、頑張りすぎず、重そうに持ち上げるんです。すると周りの男性が手伝ってくれる。特にカップルの前で大変そうにしていると、彼女にいいところを見せたいから彼氏のほうがだいたい助けてくれるんです(笑)。

津田 深い計算をしてますねえ。

黒川 それでいいんですよ。どんどん女扱いされて、脳に貯金しましょうよ。脳の中にそういう所作が入ってくると、自分が大切にされている感が増してきますから。

倉田 あ、それは確かにそう思います。

黒川 相手の動機は何でもいいんです。道を譲ってもらう、ドアを開けてもらう、階段でどうぞって言ってもらう。その所作が脳の中の感性の領域に積み重なっていくと、私は大切にされている。じゃあ大切にされるためにちょっときれいにしていこうとなる。

津田 そうですね。それはすごくいいことだと思います。

『クロワッサン』932号より

●津田攝子さん 皮膚科医/津田クリニック副院長。肌トラブルに悩む患者の立場にたって開発したスキンケアブランド「TSUDASETSUKO」が人気。クリニックには全国から患者が通院している。

●黒川伊保子さん 脳科学コメンテーター/人工知能の開発に従事したのち、2003年、(株)感性リサーチを設立。近著は『「ぐずぐず脳」をきっぱり治す〜人生を変える7日間プログラム』(集英社)より8月26日発売。

●倉田真由美さん 美容ジャーナリスト/30年以上のキャリアを持つ、美容ジャーナリストの草分け的存在。コラムの執筆、トークショーなど幅広く活躍。本誌連載「最新私的コスメ図鑑」も多くの読者に支持されている。趣味は宝塚観劇。

対談①はこちら。

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