ビューティー

ビューティ対談①|「老けない人」と「老ける人」の境界線。

40代、50代になっても若々しい人と、そうでない人の違い。つまり「年齢から自由な人」と「おばさん」の違いとは?その境界は一体どこに? 美容ジャーナリストの倉田真由美さん、脳科学コメンテーターの黒川伊保子さん、皮膚科医の津田攝子さん、同年代の3人にそれぞれの立場から語り合ってもらいました。
  • 撮影・青木和義 スタイリスト・春原久子(倉田さん、津田さん)、佐藤智春(黒川さん) ヘア&メイク・遠藤芹菜(倉田さん)、尾花ケイコ(津田さん) 文・石飛カノ
(左から)美容ジャーナリストの倉田真由美さん、脳科学コメンテーターの黒川伊保子さん、皮膚科医の津田攝子さん。

津田攝子さん(以下、津田) 私のクリニックには40代に入って急に老けた感じがするといって来院される方が多いんです。くすみやたるみ、シワを気にされて。主な原因は、女性ホルモンの低下と肌のコラーゲンの減少ですね。これによって肌の潤いや新陳代謝が低下していくんです。

倉田真由美さん(以下、倉田) 肌は28日周期で生まれ変わると言われていますけれど、代謝の衰えで40代になると約60日、50代になると75日程度とサイクルが長くなっていくという説もあります。

黒川伊保子さん(以下、黒川) えっ、自分が老けたかも……なんて気になりますか? 皆、なぜ若く美しく見られたいのでしょう。大事なのは人にどう見られるのかではなく、自分が毎日をどう楽しむかですよ。それが脳の最終目的なのに。

倉田 以前、いろんな国籍の人に、何のためにメイクやスキンケア、おしゃれをするんですかと聞いたことがあって。そうすると、日本人の8割が「身だしなみのため」と答えたんです。つまり他者のため。相手に対する礼儀だったり、相手にどう見られるかをそれだけ多くの人が気にしているんですよね。

黒川 フランスの女性はシワがどうこうとは言わないんじゃないですか?

倉田 言わないですね。それにフランス人の美容は自分自身のためなんです。他人のためだと思うと面倒ですけれど、鏡の中の自分がきれいだとうれしいから装いたいというのであれば、お手入れは決して面倒なことではないと思います。

若い女性と張り合う必要なし。重ねた年齢こそが魅力に。

津田 老けた感じがするといってクリニックに来る方は、ちょうど子どもが独り立ちする頃と重なって、〝空の巣症候群〟みたいになるんです。自分だけ取り残されたという感覚に陥ってしまう。

黒川 お受験とかバレエの発表会とか、それまで子どもにうんと手をかけてきて。でも子どもが巣立ったら生きる張り合いがなくなってしまった、と。

津田 それで、鏡を見たら顔にたくさんのシワができていて、人と会いたくなくなる。布団から起き上がれなくなる人もいます。でもね、そういう方たちが肌のケアをして少しでも〝きれい〟を取り戻すと、途端に元気になってものすごくアクティブに社会生活を送るようになるんです。私はこういうのも、自分のために行う美容のひとつだと思いますが。

倉田 日本だと女房と畳は新しいほうがいいと言われますけど(笑)、フランスではワインと女性は時を経たほうが価値があると言われていて。ヴィンテージ(年代物)を愛でる文化があるでしょ。でもただ古くなったワインは、酸化していて飲めません。やっぱり何かしらお手入れすることが大事ですよね。きれいに磨かれた古い日本家屋の温泉宿がそれなりの風格と魅力をもっているように。単に古くなるのではなく、手をかけながら歳を重ねていくことは大切だと思います。

黒川 それは同感です。たとえばね、20代の女の子が男性に「あなたが一番」と言っても、たかだか20年の人生の中の話。でも50代の私が一緒に仕事をした男性に「こんなに仕事ができる人は、私の人生の中で初めてよ」と言うと、相手の心にかなり響く(笑)。

津田 なるほど、重みが違いますものね。

黒川 この人にもう一度会いたいとかこの人に包み込まれたいと相手が思うのに、容姿は関係ないような。私の周りでは20〜30代より50代で余裕のある女性のほうがモテるんですよ。

倉田 それでも若さに固執してしまうのって、若く見えること以外に自信がもてたり誇れるものが見つからなくなってしまうからじゃないですか?

黒川 いやいや、年齢を重ねただけでも相手を引きつける迫力が出てきますよ。昔、柳橋に100歳の芸者さんがいらしたでしょう。彼女に会いに80代90代の社長さんが通ってきたというのは、やっぱり甘えさせてあげるとか安心させてあげるとか、そういう魅力があったからだと思います。

倉田 おっしゃるとおり。若い子と張り合っちゃダメですよね。一時美魔女が流行りましたけど、若い子と張り合って美しくなろうとしても、本物の若さには負けてしまいますよね。街路樹の葉っぱだって、ツヤツヤの若葉と年月を重ねた葉はやはり印象が違いますもの。

『クロワッサン』932号より

●倉田真由美さん 美容ジャーナリスト/30年以上のキャリアを持つ、美容ジャーナリストの草分け的存在。コラムの執筆、トークショーなど幅広く活躍。本誌連載「最新私的コスメ図鑑」も多くの読者に支持されている。趣味は宝塚観劇。

●黒川伊保子さん 脳科学コメンテーター/人工知能の開発に従事したのち、2003年、(株)感性リサーチを設立。近著は『「ぐずぐず脳」をきっぱり治す〜人生を変える7日間プログラム』(集英社)。

●津田攝子さん 皮膚科医・津田クリニック副院長/肌トラブルに悩む患者の立場にたって開発したスキンケアブランド「TSUDASETSUKO」が人気。クリニックには全国から患者が通院している。

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