「町おこしの理想的な答えはなかなか見つからないなと思います。ゆるキャラとか、なんとかフェスティバルとか、全国どこも同じようなことをやっている。地方に住む人たちはどうすれば町を活性化できるのか一生懸命考えているのですが、役所の枠を超える何かをやろう、という人たちがいないと今後どうにもならないと思います」
本書では、見事なコルセットを仕立てた頑固な仕立て職人・伊三郎をはじめ、掘り起こしてみれば、高齢者の中にもさまざまな技術を持つ「達人」がいることがわかり、海色は彼らを巻き込みながら、町全体に新しい風をもたらそうと奮闘する。若いエネルギーと個性際立つ老人たちのぶつかり合う様が実に痛快に描かれる。そして随所に現れる服飾の歴史やファッションの裏側の話は、アパレル業界に長くいた川瀬さんならでは。
「この小説のテーマとして取り上げたコルセットは、服飾の歴史の中でおそらくいちばん古いものです。1500年代のルネサンス期から1900年代まで、女性に欠かせなかった。もともとは貴族階級が自分の富を誇示するために、妻のウエストをコルセットで過剰に絞って、とんでもないドレスを着せていました。男尊女卑や女性の解放とリンクしている重要なアイテムなんです」