暮らしに役立つ、知恵がある。

 

広告

ケアマネジャー・服部万里子さんに聞く、災害時に高齢の親を助けるプラスアルファの備えと心がまえ

災害時に誰かの助けが必要な高齢の親がいるなら、想定と備えが大切。「一緒にいる」「遠くに住んでいる」など場面別に整理します。

イラストレーション・樋口モエ 文・秋山香織

高齢の親を守る

とっさの判断力や行動力が鈍りがちな親世代。高齢者だからこその確認ごとや備えを、現役のケアマネジャーでもある服部万里子さんに聞いた。

「避難場所や経路と合わせて確認したいのが福祉避難所についてです。バリアフリーの施設に開設され、一般の避難所では避難が難しい高齢者や障害者などを受け入れます。受け入れには市区町村ごとに条件が異なるため、自分の親が該当するか、介護認定の有無にかかわらず、事前に確認しましょう」

また、高齢者に最も欠かせないのが、薬のこと。「命に関わるような薬は、多めに処方しておいてもらうなど、医師や薬剤師に相談を。ただ、避難時に薬を忘れる人が多いのも事実。最悪、かかりつけ医や薬局の詳細を記録した『お薬手帳』だけでも持ち出せれば、後から対処できます」。“my防災カード”(別記事参照)に書いておくのもおすすめ。

日常と違う環境で、高齢者が健康に過ごすために必要な備えはほかにも。

「ウェットティッシュなどの衛生品は必須。そして災害時に困るのは、排泄。避難時にトイレに行きづらい場合も想定して、普段使わない人でもパンツ型おむつがあると安心です。また、食事が配布されても親が食べられるとは限りません。好きなもの、食べやすい形状の非常食を備えておくといいですね」

備えと同じく大切なのは、普段からのコミュニケーション、と服部さん。

「日頃の行動パターンをつかんでおけば、外出時の居場所の特定にもつながります。また、離れて暮らす場合、災害時に真っ先にお世話になるのは親の地元の自治会・町内会の方々。高齢の親のことや別居する家族の存在を事前に伝えて挨拶しておけば安心なだけでなく、普段から気にかけてくれるかも。市区町村の地域包括支援センターとも情報共有すれば、防災対策や災害発生時の相談がスムーズにできます」

一緒に避難するための備え

市区町村の「福祉避難所」を利用できるか事前に確認

高齢者も基本的に一般の避難所へ避難するが、介護など特別な配慮が必要な人向けには「福祉避難所」が二次的に開設される。ただし、受け入れ条件は市区町村で異なるので要確認。

薬、衛生品、食など健康や命に関わる持ち物は忘れずに

常備薬や医療情報が記載されたお薬手帳は、避難時には必携。トイレにすぐ行けない環境下も想定し、パンツ型おむつの備えを。親が好み、飲み込みやすい形状の非常食も。

〈高齢の親向け・プラスアルファの備えリスト〉
●常時服用している薬
●お薬手帳
●パンツ型のおむつ(または漏れにくいパンツ)
●飲み込みやすい形状の非常食など、その人に合った食べ物

歩行が困難な場合の移動にはシーツを。日頃から練習して 歩きづらい親を抱えての移動は危険。平坦な場所の…

歩行が困難な場合の移動にはシーツを。日頃から練習して

歩きづらい親を抱えての移動は危険。平坦な場所の移動なら、シーツを使い、進行方向と逆向きに親が座り、シーツの端を肩にかけ、つかまった状態でシーツごと滑らせると安全。

別々の場所にいるときに備えて

ケアマネジャー・服部万里子さんに聞く、災害時に高齢の親を助けるプラスアルファの備えと心がまえ

外出でも家の中でもスマホを持ち歩く習慣づけを

高齢者のスマホ所有率は意外と高い。ただ、置き忘れると意味がない。家の中でも近所でも必ず持ち歩く習慣をつけてもらう。「肩がけストラップを付けると持ち歩きやすくなります」

コンビニなど人がいる場所に避難するように声がけする もし外出時に災害に遭ったら、近くの店など誰かがい…

コンビニなど人がいる場所に避難するように声がけする

もし外出時に災害に遭ったら、近くの店など誰かがいる場所に避難するように、普段から話しておく。コンビニエンスストアは防災拠点としての機能があり、積極的に活用すべき。

遠くに住んでいる場合の備え

ケアマネジャー・服部万里子さんに聞く、災害時に高齢の親を助けるプラスアルファの備えと心がまえ

地域の自治会や地域包括支援センターに親や自分のことを伝えておく

災害時、すぐにお世話になるのは地域の人たち。自治会・町内会の人たちに高齢の親が住んでいること、遠方に住む自分のこと、緊急連絡先などを伝えておくと安心。市区町村の地域包括支援センターにも同様の連絡をしておく。

1週間・1カ月単位のスケジュールと行動パターンの確認を 「月曜午前はA整形外科、第3水曜午前はB内科…

1週間・1カ月単位のスケジュールと行動パターンの確認を

「月曜午前はA整形外科、第3水曜午前はB内科」「水曜9時~11時は◯◯で合唱サークル」など、1週間、1カ月ごとの親の外出スケジュールをカレンダーに書き、具体的に把握しよう。いざというときの居場所探しのヒントに。

「救急医療情報キット」を作成して、普段から冷蔵庫に準備する 緊急時、救急隊員が適切な救護を行うため、…

「救急医療情報キット」を作成して、普段から冷蔵庫に準備する

緊急時、救急隊員が適切な救護を行うため、高齢者には「救急医療情報キット」の設置が呼び掛けられている。緊急連絡先や本人の医療情報などを記入して容器に入れ、冷蔵庫に保管。玄関にはシールを貼る。詳しくは各自治体で確認。

施設職員と密なコミュニケーションを。自分の情報のアップデートも忘れずに 施設に入所している場合、家族…

施設職員と密なコミュニケーションを。自分の情報のアップデートも忘れずに

施設に入所している場合、家族の居住地や連絡先、本人の延命治療の意思確認書など、入所時の重要情報の変更が共有できていないケースも。頻繁に行けなくても職員に定期的に電話をするなどして連絡をとり、情報更新を。

  • 服部万里子

    服部万里子 さん (はっとり・まりこ)

    服部メディカル研究所 所長

    看護師、主任介護支援専門員、社会福祉士。日本ケアマネジメント学会理事。NPO法人渋谷介護サポートセンター理事長。立教大学教授などを歴任。

『クロワッサン』1172号より

広告

  1. HOME
  2. ケアマネジャー・服部万里子さんに聞く、災害時に高齢の親を助けるプラスアルファの備えと心がまえ

人気ランキング

  • 最 新
  • 週 間
  • 月 間

注目の記事

編集部のイチオシ!

オススメの連載