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『外の世界の話を聞かせて』江國香織 著──共同生活を送った子どもたちのその後

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『外の世界の話を聞かせて』 江國香織 著 集英社 1,980円
『外の世界の話を聞かせて』 江國香織 著 集英社 1,980円

本好きな高校生の陽日が通うのは、外苑前の南天文庫。運営者のあやめは、いつも陽日に「外の世界の話を聞かせて」と言う。

あやめは幼い頃、親とともに地方の元公民館だったピンク色の建物に、勝手に三家族で暮らしていた。あやめの幼馴染である真実子は葬儀社に勤務、真実子の弟の功は、夜はバーテンダー、昼はフリーターをしている(もうひと家族の子どもたちは疎遠になっている)。本書は、アウトサイダー的な環境で育った子どもたちのその後の人生が語られる物語だともいえる。

真実子が先輩社員から葬儀場の控室は日常の場と死に寄り添う場の間にある「緩衝地帯」だと教わるエピソードや、作中に何度か出てくる「隙間みたいな場所」という言葉が繋がっていく。隙間みたいな場所で生きているからこそ、あやめは陽日に「外の世界の話を聞かせて」と言っているのだなと腑に落ちる。

一方、陽日はあやめたちのピンクの家での生活に興味津々。陽日は「隙間」という居場所を持つ大人たちが羨ましいようだ。思わず、自分にとっての「外の世界」と「内の世界」と「隙間」ってどこだろう、と思った。居心地のよい隙間がほしい。

  • 瀧井朝世 さん (たきい・あさよ)

    ライター

    著書に『ほんのよもやま話〜作家対談集〜』『偏愛読書トライアングル』など。

『クロワッサン』1165号より

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