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『ある星の汽車』森 洋子 作──美しい絵で伝える切実なこととは

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『ある星の汽車』 森 洋子 作 福音館書店 1,980円
『ある星の汽車』 森 洋子 作 福音館書店 1,980円

過去1年間に刊行された書籍のベスト30を決める紀伊國屋書店主催のフェアの最新回「キノベス!2026」の第1位は村田沙耶香『世界99』だった。この企画には児童書・絵本が対象の「キノベス!キッズ2026」があり、そちらの1位がこの絵本。私は贈呈式に参加する機会があり、本書を推薦した書店員さんや著者の森さんのスピーチに胸を打たれて、本を手にした。ページをめくるなか、途中ではっとさせられた。

美しい絵本である。月が照らす広い大地を汽車が走り続けている。車内のボックス席には、たくさんの動物が座っている。本を読んでいた人間の男の子が、ふと顔をあげる。通路を挟んで斜め前でねむりこけているのはナマケモノ。車内を散歩することにした男の子は、さまざまな動物に出会う。上品な装いの彼らの姿がとても幻想的で細部まで眺めてしまう。

「1681」という駅でモーリシャスドードーのおじさんが降りていく。その後も、ぽつぽつと降りていく動物たちが……。何を表しているか分かりますよね? 心苦しくなるが、しかし希望のない結末ではない。まだできることはある、と思わせる。こういう絵本が1位を獲るって素晴らしい。

  • 瀧井朝世 さん (たきい・あさよ)

    ライター

    著書に『ほんのよもやま話〜作家対談集〜』『偏愛読書トライアングル』など。

『クロワッサン』1164号より

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