【エッセイ】「アウトドアに目覚めた、幸せな一日」 文・西田尚美
撮影・メグミ スタイリング・金子夏子 ヘア&メイク・面下伸一(FACCIA)
無性に山へ行きたくなるのはなぜなんだろう。運動が苦手な私が、なんで山を歩いているんだろう。
いつから始まったのか思い返してみると、2024年の5月にドラマのロケで日立市に滞在中のオフの日だ。お休み、何をしようかなぁとぼんやり考えながらインスタをぼけーっと見ていたら誰かがあげていた緑の奥深い写真に目が釘付けになった。場所のところに御岩神社と書いてある。「へぇ、素敵な場所。で、どこらへんなのよ?」と調べてみると……あらま! 近くでないの。私スピリチュアルとかわからないけど、これは呼ばれてるというやつではないの?
ということで、休日の過ごし方が決まった。マネージャーが置いていった車があったのでそちらを借りて、御岩神社まで運転した。私は、神社仏閣巡りが好きで地方ロケがあるときはその街でレンタカーを借りてよく神社にお参りに行く。今回もそのつもりだった。駐車場にすんなり到着し、御岩神社でお参りして帰るつもりだった。が、続々と上から降りてくる人がいるではないか。しかも清々しい顔をしている。看板を見るとハイキングコースがあるらしい。片道約60分、私でも行けるんじゃない? 今日スニーカーだし。と、足を踏み入れたのが始まり。歩いていると、降りてくる方たちが「こんにちは」と挨拶してくれる。私にはそれがとても心地よく新鮮で、一人で登っていたけど一人じゃないような気分だった。途中なかなか着かなくて挫けそうになったとき、すれ違う方に「あとどれくらいですか?」と聞くと、「あともうちょっとだから頑張って!」と励ましていただいた。気楽な気持ちで登ったので、正直しんどい。でも、緑色の景色は最高で空気も美味しいし、水の音もとても気持ちいい。
いつのまにか汗だくになって頂上に着いた。一人で景色の写真など撮っていたら、素敵な老夫婦から「写真を撮っていただけますか?」とお声が掛かったので拙い写真を撮って差し上げた。そしたら「あなたもお撮りしますよ」とうれしいお言葉! なんとお優しい(涙)。そして頂上から見た景色の美しいことよ、歓迎してくれたかのように蝶がひらひらと舞っていた。帰りは気をよくして、自分のペースで歩いた。とても神聖な気持ちになり、禊ぎをしたかのようなスッキリ感。山の神を味方につけたような心地がした。ここに来た証を残したくて、降りたところの社務所で初めてのご朱印帳を購入した。これが私の山デビューである。
最近はそれに加えて鳥のさえずりや、野鳥を見ることも気になってきている。さぁ、耳を澄ませて歩こう。
『クロワッサン』1163号より
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