プロアスリート栄養コーチが教える、 コアマッスルのための食事術
撮影・小川朋央 調理&スタイリング・川端理香 イラストレーション・川合翔子 文・松本あかね
体幹を強くするために筋肉量を増やす筋トレは欠かせない。その成果を最大限に活かす鍵が毎日の食事にある。
筋肉をつくる主な栄養素はたんぱく質だが、それだけでは不充分とプロスポーツ栄養コーチの川端理香さんは話す。
「たんぱく質が体内で消化・吸収され、再び筋肉をつくるたんぱく質として合成する過程では、ビタミンやミネラルなどの栄養素が必須。特にたんぱく質の代謝に欠かせないのがビタミンB₆。たんぱく質を多く摂ったら、ビタミンB₆も多く摂るのがポイントです」
例えばビタミンB₆を豊富に含むブロッコリーとにんにくを肉・魚料理に添えたり、調理に用いることでたんぱく質がスムーズに代謝される。たんぱく質とビタミンB₆、それに筋肉増強作用のあるビタミンDを体幹強化に必要な基本の3栄養素と覚えておこう。
さらに腸内環境を整える食物繊維や鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルを摂ることも大切だ。
「筋肉量を増やすためだけでなく、トレーニングを持続するエネルギーや疲労からの回復も食事が担うもの。トレーニングと適切な食事を習慣化することが体幹強化への近道なのです」
たんぱく質は毎食摂るのが正解。朝昼晩で「20g×3食」を目標に
たんぱく質は1食でまとめて摂るより、毎食摂るほうが筋肉はつきやすい、と川端さん。
「普通の人の体が筋肉をつくる(筋肥大)には、毎食20g程度のたんぱく質摂取が目安。1食でたくさん摂るより、朝昼晩の3食に分けて食べるほうが効率的です」
新陳代謝により、体内のたんぱく質が不足すると、筋肉の分解が合成を上回ってしまう。せっかくつけた筋肉を維持するためにも、毎日継続して摂取したい。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」(2025年度版)によると、成人女性の一日のたんぱく質の摂取推奨量は50g。
「ハードなトレーニングをしているのでなければ、普段食べている食事に、たんぱく質の多い食材を少し多くする意識を持って、足し算で考えていくとよいでしょう」
鶏肉に限らず、牛・豚・羊肉を上手に取り入れよう
鶏肉は体幹強化に必要な基本の栄養素であるたんぱく質・ビタミンB6・ビタミンDを含む理想的な食材。中でも鶏むね肉は低脂肪で疲労回復を促す抗酸化成分のイミダペプチドを含む優等生だ。ただし、たんぱく源をそれだけに限ってしまうのはもったいない。日日のトレーニングや体づくりの観点を踏まえると、牛、豚、羊肉が含むそのほかの栄養素にも重要な働きがある。
糖質をエネルギーに変え、疲労回復を助ける豚肉のビタミンB1、血液をつくり、筋肉合成のために働く牛肉の鉄分、亜鉛。羊肉はビタミンB群、鉄分、亜鉛が豊富なほか、脂肪燃焼を促すL–カルニチンも含む。いずれも脂肪の少ないヒレやももを選ぶこと。
運動の前と後はたんぱく質のチャージを忘れずに
効率的に筋肉量を増やすには、たんぱく質を摂取するタイミングも意識したい。特に運動直後の1〜2時間は筋肉になるたんぱく質の合成量が増えるゴールデンタイム。このとき、血液中にアミノ酸がめぐっていると合成がスムーズにいく。運動の2〜3時間前と運動後20分以内にたんぱく質を摂取することを忘れずに。「運動前後の意識で筋たんぱくの合成が高まります」
もう一つのポイントは糖質も一緒に摂ることにある。食事をして血糖値が上がるとインスリンが分泌されるが、それを合図にたんぱく質の合成量が高まる。この「たんぱく質+糖質」を手軽に摂れるのが牛乳。水分補給もできるすぐれものだ。
かえって体に負担!? 「たんぱく質過多」に要注意
たんぱく質ブームの影響か、とにかくたんぱく質をたくさん摂ればいいだろうと偏った食生活に走る傾向が気になると川端さん。「たんぱく質を摂ろうとする意識は大切ですが、摂りすぎもまた問題。最近多いのは、主食をカットし、鶏むね肉ばかり食べてプロテインのサプリメントを飲む『たんぱく質過多』に陥っているケースです」
たんぱく質の摂りすぎは肝臓や腎臓、消化器官への負担が大きい。もし体が重い、疲れが取れない、おならや便が臭いといった傾向があるなら、腸内環境が悪化している可能性を疑って。
「たんぱく質を多く摂ったら、その分、食物繊維を摂る量も増やしましょう。腸内環境がよいと栄養の吸収もよくなり、よいコンディションをキープすることにつながります」
繊維質の豊富な野菜やこんにゃく、汁物やスムージーなど、水分の多いメニューを摂ることも心がけよう。
おやつをたんぱく源に置き換える「補食」のすすめ
1食で摂るたんぱく質が少なかった場合を考えると、3食の合間に「補食」を挟むのが望ましい。実は3回に分けて摂るより、5回に分けるほうが筋肉がつきやすいこともわかっている。やり方は普段のおやつをたんぱく質が摂れるものに置き換えれば簡単。ヨーグルト、豆腐バーやチーかまなど、コンビニなどで手軽に購入できる。「意外にたんぱく質が多いのはあんぱん。鉄と糖質も摂れるのでエネルギー源ににいいでしょう」
『クロワッサン』1162号より
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