原因を知って数値をコントロール。コレステロール、血圧、血糖値はなぜ上がる?
イラストレーション・小林マキ 文・保手濱奈美
「40~50代の女性は、コレステロール値、血圧、血糖値が上がりがちですが、これは女性ホルモンのエストロゲンの減少に起因するもの。誰しも避けられません」と話すのは、生活習慣病予防のスペシャリスト、野口緑さん。
「基準値よりも高い数値は要注意のサインで、その状態が長く続くと血管の老化が加速し、心筋梗塞や脳卒中など重大な病気のリスクが高まります。ただ、コレステロール値や血圧、血糖値は、上がっても自覚症状がないので、気づかないまま放置してしまうことも。そんな事態を避けるためにも、まずは健康診断でこれらの数値が年々上がっていないか確認してみてください」
上がっていたとしても、気づくのが早いほど挽回は可能だという。
「大切なのは、年齢に応じて生活習慣を見直すこと。人生100年時代、健康な血管で生き生き過ごしましょう」
「LDLコレステロール」──更年期を境に上がる数値①
(こんな人はとくに注意)
□洋菓子が大好き
□カルシウムを積極的に摂っている
□油っぽい食べ物をよく食べる
(そもそも何?)
血管や女性ホルモンの材料になる、「コレステロール」の運搬役
コレステロールは、おもにLDL(悪玉)コレステロールと、HDL(善玉)コレステロールの2種類がある。「数値の高さで注意が必要なのは、LDLコレステロール。とはいえ、女性ホルモンや細胞膜、胆汁酸などの材料として、なくてはならないものでもあり、肝臓で作られたコレステロールを全身の細胞に届ける働きも担っています。一方、HDLコレステロールは、余分なコレステロールを肝臓に運ぶ役割があります」
(上がる原因)
女性ホルモン産生への使い道が減って血中に余る
LDLコレステロールの役割のひとつは、エストロゲンなどのホルモンの材料になること。「ところが、更年期以降はエストロゲンの分泌量が低下するため、LDLコレステロールの使い道がなくなり、血中で余ってしまいます。その結果、LDLコレステロール値が上昇。それにもかかわらず、卵や牛乳、小魚といったコレステロールを上げやすい食品を必要以上に摂り続けていると、数値は悪化の一途へ。健康のためと積極的に摂っている食品が、意外な落とし穴になることもあるんです。更年期以降は、食事の見直しが必須です」
(放置すると…)
血管に薬を飲んでも消えないコブができ、血流の妨げになる
余ったLDLコレステロールが使われず、血中に長期間滞っていると、血管の内側に〈プラーク〉というコブができてしまう。「それにより血液の通り道が狭まり、血流が悪くなります。そこに、もともと高血圧だったり興奮するなどして強い圧がかかると、プラークの表面が傷つき、出血して血栓ができてしまうのです。ひいては血管が詰まり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まります。プラークは、一度できると薬などで治すことができません。LDLコレステロール値が高い状態が長く続くほどプラークは肥大するので、早めの対処が重要です」
血圧・血糖値──更年期を境に上がる数値②
(こんな人はとくに注意)
□お腹周りに脂肪がついてきた
□濃い味付けが好み
□ほとんど運動しない
(そもそも何?)
血圧とは血液が通る際に血管の内側にかかる圧力。血糖値とは血液中に存在するブドウ糖の量
血圧とは、心臓から全身へ血液が押し出される際に、血管の壁を押す力のこと。「圧は壁だけではなく、血液が流れる方向にもかかります。高血圧は、その圧力が基準値よりも高く、血管や心臓に負担がかかり続けている状態です」。一方、血糖値は、血液中に含まれるブドウ糖の量を示す数値。「高血糖状態とは、血液中のブドウ糖濃度が高い状態が続くこと。食事から摂取した糖質がエネルギーとして使われず、血液中にブドウ糖が過剰に残っていると、高い数値になります」
(上がる原因)
過剰な内臓脂肪が血圧・血糖値を上げる悪玉物質を出す
血圧や血糖値の上昇も、LDLと同じくエストロゲンの減少が関わっている。「女性の体には、若い頃はエストロゲンの働きにより、余ったエネルギーを皮下脂肪に優先的にため込む機能があります。それは妊娠や授乳に備えてのことですが、その役割を終える更年期以降、エネルギー貯蔵の行き場は内臓脂肪へ。下腹にぽっこりついている脂肪が、まさにそれ。その量が基準値を超えると、血圧を上げるように命令する悪玉の生理活性物質が分泌されたり、血糖値を下げるホルモンのインスリンの効きが悪くなったりするため、血圧や血糖値が上がりやすくなります。高血圧に関しては、塩分の多い食事も要因に」
(放置すると…)
血管が傷つき、炎症が起こりやすく。修復する物質も出にくい状態に
血圧が高いと、血管に大きな負担がかかる。「血管の壁や曲がり角に強い圧で血液が当たり続けるため、血管は破れまいとして硬くなります。壁はひび割れてしまうこともあり、その隙間からLDLコレステロールが潜り込んで、プラークを形成するリスクが上昇。結果、動脈硬化や血栓により、脳出血や脳梗塞の発症に繋がります」。高血糖もプラークの一因に。「それは過剰なブドウ糖が、LDLコレステロールとくっつき、プラークの材料を増やしてしまうため。また、“糖”というだけにベタベタしていて血管の壁に張りつく性質があり、張りつくと炎症を起こしてしまう。それにより血菅の老化がすすんでしまいます」
『クロワッサン』1152号より
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