放っておけばカビ・ダニの温床に。梅雨入り前のおうちメンテナンス。
正しい対処法を専門家に聞いた。
撮影・青木和義 イラストレーション・鈴木衣津子 文・小沢緑子
健康に悪影響! 〝病原ホコリ〟を作り出さないことが先決。
「温暖化に加え、今は日本でも気密性の高い住宅が増えたこともあり、一年を通して家の中にダニやカビは発生しやすくなりましたが、やはり梅雨の時季から8月にかけては要注意です」と、医療環境管理士の松本忠男さん。
ダニやカビも自然界にいる生物で家の中に一定数存在するのは仕方がないことだが、「『高温度』『高湿度』の環境を好み、温度は20度以上、湿度は60〜70%くらいから繁殖し始めます。加えて『汚れ』も大好物。この3つの条件が揃うと爆発的に増えます」。
もともとホコリは衣類などから出る繊維が主成分で最初は無害だが、そこに人間の体から剥がれ落ちた皮膚や髪の毛、皮脂などの汚れがくっつき混ざるとダニやカビの絶好のエサや棲み処となり、健康に悪影響を与える“病原ホコリ”に変化していくという。
「顕微鏡で見るとダニのフンや死骸、カビの胞子、細菌もたくさん混ざっています。この病原ホコリを放っておくと、室内の人の動きや空気の流れで空中に舞い上がり吸い込んでしまうことに。くしゃみ、咳、鼻水、鼻づまりをはじめ、呼吸系のアレルギー性疾患を引き起こすリスクが高くなります」
水回りに発生する汚れも同様だ。
「特に水分はカビや細菌が増える大本。浴室や排水口などにぬめりのあるピンク色の汚れが発生することがありますが、あれはカビではなく細菌の一種。石鹼カス、皮脂汚れなども混じり水分のある環境で繁殖します。それがエサとなりカビも増殖していきます」
体に悪影響をおよぼす病原ホコリや汚れの発生を阻止するためにも、梅雨前に対策を。
「一番大切なのは、ダニやカビなどが繁殖しやすくなる条件を作り出さないこと。そのためには、まずはダニやカビの温床となる部屋の隅や家具との隙間などにたまる『病原ホコリを取り除く』ことが先決。乾拭きか掃除機で舞い上がらないように静かに回収を」
もうひとつは、梅雨のジメジメした湿気を部屋にこもらせないように「換気」をして風通しをよくすること。
「換気は空気の通り道となる『入り口』と『出口』を設けることが必要で、窓を2カ所開けましょう。できるだけ対角に位置する窓がベストです」
適当な場所に窓がない場合は、1カ所だけ開け、キッチンの換気扇を回して強制的に換気を行う方法も有効。
「この2つの対策は掃除の基本ですが、確実にダニやカビなどの病原体の量を減らすことができます。健康を守るためにも『汚れ』と『換気』をコントロールすることから始めましょう」
忙しくても簡単、すぐに実行したい湿気対策。
「花粉の季節が終わると、まるで入れ替わるようにダニ・カビの季節がやってきますが、家の中が傷むだけではなく、健康に大きな影響を与えるのが『湿気』。決して侮れません」と、住生活ジャーナリストの藤原千秋さん。
特にチェックしたい“湿気危険地帯”が、1.寝具 2.浴室の天井と棚 3.洗濯機の洗濯槽 4.冷蔵庫の野菜室 5.エアコンのフィルターの5カ所。
「ポイントを絞って対策をとるだけでもダニやカビの繁殖は抑えられます。梅雨入り後に慌てるより、今のうちにメンテナンスをしておきましょう」
「拭き掃除で使った消毒用エタノールは水溶性・油溶性の汚れ共に使え、蒸発して水分が残らないのも利点。カビを広げないようにウエスは使い捨てに」。
※エタノールは使用上の注意をよく読み、引火や目に入らないように気をつけて、換気を行いながら使用してください。
\使ったのはコレ!/
【寝具】一番気をつけたい寝具。 毎日のひと手間で対策を。
「ダニ、カビ対策で一番注意したい場所というと真っ先に浴室を思い浮かべる人は多いですが、より気をつけてほしいと思うのが一日の中で長時間使用する『寝具』」。
朝起きたとき、背中や腰のあたりに湿った感じがすることがあるが、それは寝ている間にかいた汗。
「しかもこれから一年中で最も汗をかきやすい時季がやってきます。寝具の湿気対策の基本は『洗えるものは洗う』『干して乾燥させる』の2つですが、できるだけ負担なく、そして日常的に毎日でもラクにできる方法があるのでぜひ取り入れてほしいです」
掃除機をかけて、ダニの死骸を除去!
布団を干した後は、ダニ予防のために専用アタッチメントをつけて掃除機を念入りに。
「布団表面のホコリやダニの死骸やフンを吸引できるほか、中に空気を通す意味でも有効。特に一番布団が湿る上半身があたる部分は時間をかけて行ってください」
掛け布団を椅子に掛けておく。
朝起きたらすぐベッドメイキングするのは、実は湿気対策においては、布団の中に湿気を閉じ込めてしまうことになり逆効果。
「掛け布団は椅子やハンガーなどを利用して広げておく。それだけでも湿気が飛び、表面を乾燥させる効果があります」
ダニ取りマットは生きたダニに効果的。
「敷布団やベッドマットも、汗や皮脂などの湿気がこもるので定期的に干すか立てるかして乾燥させたいですが、重いのでなかなかの重労働。事前に敷布団やベッドマットの下に除湿シートを敷き、さらにダニ取りマットを置く二段構えで予防を」
シーツの上にバスタオルを敷いて毎日交換。
「シーツは毎日交換するのがダニ・カビ対策では理想ですが、現実的ではない。敷布団やベッドマットになるべく汗が染み込まないように、上半身があたる部分にバスタオルを敷くのはおすすめ。バスタオルなら洗うのもラクでハードルが低くなります」
【浴室|天井と棚】見過ごしがちなだけに、カビの供給源となりやすい。
浴室の床や壁はカビ対策を行っても、天井は意外と見落としがち。
「蒸気は上に上がり結露しやすいので、浴室の天井はよく見ると黒いポツポツがあることが。せっかく床や壁をきれいに掃除しても、カビが天井に残っていたら胞子が舞って床に落ちてまた繁殖し、まるで浴室がカビ牧場のように……」。
浴室の棚も見過ごしがちだ。
「目線より上側と下側は普段気づきにくいので、梅雨前にカビ防止策に着手しましょう」
\使ったのはコレ/
天井は消毒用エタノールで拭き取る。
天井は真っ先に掃除を。
「目線より高い場所の掃除は踏み台に乗ったりせず、柄が伸びる掃除用ブラシの利用が安全。先端に古タオルを巻き消毒用エタノールを吹きかけて使えば、二度拭きの手間が省けます。普段目が届かずカビが生えやすい四隅、換気扇の際も丁寧に拭き取りましょう」
中性洗剤で汚れを溶かして落とす。
浴室の棚はバスグッズなどの置き場所にすることが多いため、水分、石鹼カスや皮脂汚れも飛び散り、ピンク汚れやカビの温床になりやすい。
「中性洗剤とスポンジを使って、隅々まで汚れを溶かして洗い落としましょう。防カビ機能がついた浴室用洗剤があり、特に梅雨時はおすすめです」
【洗濯機|洗濯槽】イヤな生乾き臭の元、 洗濯槽の汚れをきれいに。
「洗濯槽に汚れが蓄積してしまうと、いくら洗濯をしても衣類はきれいになりません」。
洗濯機の洗濯槽は、バケツの中にザルが入っているような構造。
「そのバケツとザルの間に繊維クズ、髪の毛、洗剤のカスや水分が残ると、洗濯槽の裏側にはカビや細菌が繁殖しやすい条件が勢揃い。洗濯物からイヤな臭いがする元になるので、発生源を1つでも減らすために、定期的に洗濯槽クリーナーを使って清潔さを保ちましょう」
\使ったのはコレ/
\ドラム式にはコレ/
月1回、洗濯槽専用クリーナーを使う。
「洗濯槽の掃除は、専用クリーナーを使うのが一番。洗濯機の種類で異なりますが、縦型は泡立ちがよく汚れを剥がすイメージの酸素系(過炭酸ナトリウム)、ドラム式は誤作動の元になるので泡が立たず汚れを溶かすイメージの塩素系(次亜塩素酸ナトリウム)を。いろいろな製品がありますが、汚れをしっかり取るためには説明書どおりに使うのがコツ。梅雨の時季は月1回の頻度をおすすめします」
縁やゴムパッキン部分も拭き取る。
「洗濯槽の縁やゴムパッキン部分も汚れやすいので、ウエスに消毒用エタノールをつけて拭き取りを。特にドラム式はドアの内側の大きなゴムパッキンの裏側も忘れずに。ちなみに洗濯槽は湿気がこもりやすいので、使った後はフタを開けておくほうがカビの発生は抑えられます」
梅雨時の洗濯量は目視で40%程度に。
「一度に洗う量が多いと衣類に汚れが残り、部屋干し臭の元に。特に梅雨時の洗濯は少量ずつ、洗濯槽の40%程度の量を目安に」
【冷蔵庫|野菜室】野菜についてきた土や残ったクズがカビの温床に。
「野菜は基本的に微生物が棲む土の中で育つので、表面に細菌もカビの胞子もくっついています。さらに、野菜室は冷蔵庫の中で一番温度が高いため、野菜についてきた土や野菜クズを放置しておくと、それをエサにカビや細菌も繁殖」。
冷蔵庫の掃除は気温が低く食材が傷みにくい冬がベストといわれるが、「野菜室は庫内のほかの場所と比べても菌の検出数が多いことで知られているので、除菌も兼ねながらマメに掃除を」。
水拭きNG、消毒用エタノールで。
「野菜室が取り外せるなら、食器用中性洗剤を使って丸洗いをするのが手っ取り早いですが、普段は手軽に拭き取る方法を。水拭きすると野菜の土やクズについたカビや細菌を塗り広げてしまうこともあるので、ウエスに消毒用エタノールを吹きかけて拭き取りましょう」
ドアの内側もサッとチェック。
野菜室のついでにドアの内側もチェック。「ほこりが溜まっていたり、調味料が垂れていたりするので、ウエスと消毒用エタノールで拭き取り掃除を。
冷蔵庫は一度にまとめて掃除しようとすると大変なので、棚が空いたらその都度サッと拭き取ることが大事。後でラクになります」
【エアコン|フィルター】自分でできる部分の掃除とメンテナンスは必須。
「エアコンは今や生活になくてはならない〝インフラ家電〟。本格稼働させる前に、異音はないか、風はちゃんと吹き出すかなどと運転チェックをしながら、自分でできる範囲の掃除とメンテナンスをしておくのが必須」。
掃除すべき箇所は、エアコン本体の前面パネルの内側にあるフィルターと、吹き出し口にある羽根。
「エアコン内部は故障の元になるので、自己流クリーニングはおすすめしません。プロに依頼の一択です」
\使ったのはコレ!/
中性洗剤と歯ブラシで汚れ落とし。
フィルターは、エアコン本体から取り出して掃除。「ここのほこりが内部のカビの原因になることも。浴室などに持ち込んで、中性洗剤と柔らかい歯ブラシを使って洗い流したら、日陰でしっかり乾かしましょう」。洗剤は中性タイプなら住居用のほか、キッチン用を使ってもOK。
羽根に黒い汚れがないかチェック。
吹き出し口にある羽根は、ウエスと消毒用エタノールで拭き取る。
「もし黒い汚れがあれば油煙かカビ。試運転で臭いがしたらカビが繁殖している場合が多いので、専門業者に掃除をしてもらうのがベター。目安として3年間掃除をしていない場合、かなり汚れている確率が高いです」
『クロワッサン』1118号より