ポッドキャストや聴く読書など、スマホで聴く音声メディアガイド。
撮影・黒川ひろみ、谷 尚樹 イラストレーション・山口正児 文・黒田 創 構成・堀越和幸
多くのメディアがある今こそラジオ的な魅力を再認識。
●武田砂鉄さん(ライター)
今は個々の好みに合わせた音声メディアがたくさんありますよね。僕は子どもの頃からラジオ好きなのですが、ラジオってそうしたものの対極にあって古臭いと言われたりもする。でもラジオの老舗番組って長年の蓄積の上に作られていて、トークの引き出しの多さなど、さすがだなと感じさせられることが多いんです。
中には興味のない話もあるとは思いますが、それはそれで良いのではないかと。現代はいい意味での無駄な情報が入ってくる機会が減っていると思うし、何げなしにラジオで聴いた話が妙に心に残ったりするんです。
僕自身、生放送に出演していますが、ラジオは長い尺で自分の考えを話せて、予定調和に終わらない面白さがある。そんな中でリスナーと一緒に物事を考える機会が生まれたりする。ライブの楽しさですね。
個人的にはポッドキャスト『すべてのニュースは賞味期限切れである。』を聴いています。ただのお喋りではなく、いろいろと踏み込んだ話をしていて、聴きごたえがありますよ。
コロナ禍を機にリスナーに。 配信の魅力にも目覚めました。
●中川正子さん(写真家)
今までラジオもほとんど聴かない生活だったのですが、コロナ禍を機にいろんな音声メディアを聴くようになりました。外出する機会がパタッとなくなり、きっと生の声を聴くことに飢えていたと思うんです。
最初は英語のポッドキャスト、次は『コテンラジオ』とジャンルがどんどん広がっていきました。特に友人のひうらさとるさんのvоicy(ボイシー)は直接語りかけてくれる感じがいいなと思い、私もやってみたい!と彼女に相談したら背中を押してくれて、3月から配信を始めました。
以前もインスタライブはよくやっていたのですが、音声なら化粧しなくていいし(笑)、寝る前などに気軽に収録できる。あと、音声だけのほうが本音を話せる気がしますね。私は以前から周りに相談をされることが多く、vоicyにも同世代の方からいろんなメッセージを頂くので、個人的なことを話すほかに、皆さんのお悩みに答えています。双方向のコミュニケーションになればいいなと思っています。
インターネット・ラジオ|ラジオはスマホで聴く時代。もはや生活の一部です。
既存のラジオ局がウェブやアプリを通じて配信する音声サービス。「radiko(ラジコ)」アプリの普及などでラジオ人口は全体的に増えており、ローカル局でしか流れない番組をエリアフリー機能で楽しむ人も。また海外のラジオも簡単に聴けるので旅行気分も味わえる。
●radiko(ラジコ)
今いる地域のラジオ番組をウェブやアプリなどで無料で聴けるサービス。聴き逃した番組も過去1週間以内ならタイムフリー機能を使って聴取可能。プレミアム会員になると(月額385円)日本全国のラジオ局を聴くことができる。
●らじる★らじる
NHKラジオ専用の無料サービス。ラジオ第1(R1)、ラジオ第2(R2)、NHK-FMの番組が聴けるほか、多くの番組は放送終了後1週間タイムフリーで聴けるので、予定や生活リズムに合わせて楽しめる。ラジオ第2は語学学習にも最適。
●Radio Garden
世界中の8000以上の放送局を網羅するグローバルラジオアプリ。グーグルアースのように画面上の3D地球儀を指で回すと、ラジオ局を示す緑の点が現れるので再生ボタンを押すだけ。気分に合わせて直感的に放送局を探せるのが楽しい。
●ListenRadio(リスラジ)
本来地域限定でしか聴けない日本全国のコミュニティFM、約100チャンネルをウェブやアプリで聴くことができる無料サービス。出身地のローカルラジオを聴けばどこか懐かしい気分に。コミュニティFMを網羅するアプリの代表格。
ポッドキャスト系|あの人がこんなプログラムを!? ニッチなトークに興味津々。
電波を通じてリアルタイムで放送されるラジオ番組に対し、録音されたプログラムが配信されるのがポッドキャスト。タレントやミュージシャンのプログラムが多い。Spotify(スポティファイ)、Amazon Musicといった音楽配信サービスでも聴けるため、手軽に楽しめるのもポイント。
●ホントのコイズミさん
傍らにはいつでも本があった、という小泉今日子さんが、本と本に関わる人たちに会いに行き、語り合うSpotifyオリジナルプログラム。本マニアのコアな読者の気持ちをがっちりつかむ。毎週月曜配信。
●TBSラジオ『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』
TBSラジオでおなじみ、コラムニストのジェーン・スーさんと、アナウンサーの堀井美香さんがリスナーのメッセージに答え、本音の掛け合いを繰り広げる。各配信サービスにて。毎週金曜配信。
●すべてのニュースは賞味期限切れである。
武田砂鉄さんおすすめ。共にライターで編集者の速水健朗さんとおぐらりゅうじさんが、事件やテレビ、ポップカルチャーなどに切り込む時事放談コンテンツ。各配信サービスにて。週1~2回配信。
●歴史を面白く学ぶコテンラジオ
中川正子さんおすすめ。歴史マニアの2人と、歴史弱者による人気プログラム。目から鱗的な視点を与えてくれ、歴史が苦手だった人もその奥深さを楽しめる。各配信サービスにて。月・木曜配信。
音声プラットフォーム系|友だちのおしゃべりを聴いているような感覚で楽しみたい。
最近注目の新ジャンル。音声配信を聴くのはもちろん、自分でも配信でき、そちらに興味がある人にもおすすめ。stand.fm(スタンドエフエム)は誰でも配信でき、voicy(ボイシー)は審査による承認制。各ジャンルの専門家やインフルエンサーが続々と始めている。
●高尾美穂からのリアルボイス
産婦人科医師、スポーツドクター、ヨガ指導者の高尾美穂さんが日々をより良く生きるための話を毎日配信。リスナーからの相談に真摯に答える落ち着いた声に、日々の疲れも癒やされる。stand.fmにて。
●中川正子radio
冒頭のインタビューに登場した中川正子さんが仕事やインスピレーションを受けたこと、日々の暮らし、子育てなどについて語る。同世代のリスナーから多くの支持を得ている。voicyで週1~2回配信。
●ひうらさとるの漫画と温泉
中川正子さんおすすめ。漫画『ホタルノヒカリ』の作者が、兵庫・城崎温泉での暮らしやおすすめカルチャー、恋愛やセックスについてのウィメンズトークを展開。voicyで日曜・祝日以外毎日配信。
●石井正則のとりあえずやってみよう!
近年は写真家としても活躍する俳優の石井正則さんが、「人生を楽しいものにする」をテーマにvoicyで配信中。石井さんの穏やかな語りとほのぼのした内容にほっこりさせられること請け合い。
聴く読書系|ながら聴きで読書を楽しむ。声優や俳優による朗読にも注目。
本を朗読するコンテンツ。単価は一般書籍よりも高めだが、オーディオブックサービス「Audible(オーディブル)」なら月額1,500円で12万以上の対象作品が聴き放題と、サブスクならではの割安感。プロの声優や俳優の朗読が聴けるのも魅力。ここでは編集部Kがおすすめをご紹介。
●ねじまき鳥クロニクル
村上春樹さんの著書が俳優・藤木直人さんの朗読で音声化。現在第2部まで配信中で、7月15日に第3部が配信予定。今後も『海辺のカフカ』などの村上作品を制作予定。Audible独占配信。
●池上彰の世界の見方 ロシア
混迷を極めるロシア・ウクライナ戦争。わからないことが多いロシアの歴史や実像について池上彰さんが6つのテーマで丁寧に解説した書籍を、声優の白川周作さんが朗読。Audible配信。
●貴様いつまで女子でいるつもりだ問題
誰もが見て見ぬふりをしてきた、女性にまつわる諸問題について、ジェーン・スーさんが鋭く切り込む話題のエッセイ。朗読で聴くのは実に新鮮。講談社エッセイ賞受賞作品。Audible配信。
●第三の嘘
アゴタ・クリストフによる3部作の完結編。ベルリンの壁の崩壊後、別れたままの双子の兄弟が再会を果たした時に明かされる真実と嘘とは。ナレーターの演じ分けに注目。Audible配信。
『クロワッサン』1072号より
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