イラストレーター・川原真由美さんの無理なく楽しい、暮らしの節約術。
撮影・柳原久子 文・嶌 陽子
自分が心地よいと思うバランスでお金を使いたい。
取材当日、川原真由美さんが着ていたカーディガンの、きれいなミントグリーン色が目をひいた。
「実はこれ、母親のものなんです。ボタンは自分で付け替えました」
家具も新しく購入したものはほとんどなく、家族や友人から譲り受けたものを長年使い続けている。そこには節約精神というより「これが自分にとって心地よい」という気持ちがあるようだ。
「お金を使わないことばかり考えるのはなんだか虚しいし、我慢している分いつかリバウンドしてしまいそう。それよりも、自分が本当に欲しいものやしたいことに意識を向けるようにしていると、自然と無駄遣いが減り、結果的に節約になる気がします」
衝動買いなどの失敗も経て、少しずつちょうどいいお金の使い方がわかってきたという。無駄遣いを防ぐのに大切だと考えているのがストレスを溜めないこと。自宅での仕事の合間をぬって近所の公園などを散歩している。
「頭の中を空っぽにして土の上や木々の中を歩くと、満ち足りた気分になって自分の軸がはっきりしてくるんです」
10年前から始めた登山も自分の軸を保つ上で欠かせない趣味。考え方にも影響があったと話す。
「荷物をなるべく軽くするため、山には必要最低限のものしか持っていきません。でもそれだけだと味気ないのでコーヒー豆を挽いたものや好きなおやつなど楽しみをプラスすることも。その塩梅は、登る山や体調によっても変わります。
お金の使い方もそれと一緒だと思うんです。何がぜいたくで何が必要か、そのバランスは自分にしかわからない。人と比べず、その時々の自分が考える心地よさに合わせて、いいお金の使い方をしていきたいです」
節約術1(本当に気に入った服を長年、大切に着続ける。)
服の衝動買いはめったにしないという川原さん。一度買った服は長く着続けることが多い。
「本当に気に入った服は高価でも買って、大切にしながらずっと着続けます。母が若いころに思い切って買ったテーラーメイドのコートも今は私が引き継いで着ています。質の良いものは長く着られるので、結果的にはお金がかからないかも」
節約術2(寝る時も仕事中も。 湯たんぽで一日中暖かく。)
冬は湯たんぽが大活躍。夜、寝る時に布団の中に入れるのはもちろん、日中に自宅で仕事をする際も足元に置いている。おかげでエアコンやヒーターに頼りすぎず、暖かくして仕事ができる。
「足元が熱すぎず冷えすぎず、ちょうどいい温かさになります。さらに足元を温めるために、靴下の重ね履きなどもしています」
節約術3(趣味の登山グッズを日常や防災にも兼用。)
「最近の登山グッズは本当に軽量で機能的。日常でも使っているし、防災用品もこれで兼用できます」
リュックは旅行の際にも使用、超軽量リュックは買い物用のエコバッグに。寝袋は友人が泊まりに着た時の布団にも。ダウンの上下など普段使いのウェアも多い。
「山に持っていく食料は、いざという時の非常食にもなります」
節約術4(家族や友人から譲り受けた家具が、今も活躍中。)
丸テーブルは川原さんが生まれたころから実家にあったもの。椅子は伯父の形見として譲り受け、ソファは知り合いから譲られた。新しい家具はほとんどなく、古いものに手を加えたりしながら、空間に上手になじませている。
「縁あって集まったものですが、馴染みがあるものに囲まれていると気持ちも落ち着きます」
『クロワッサン』1062号より