長く元気でいてほしいから、犬&猫の今どきヘルスケア事情。
イラストレーション・yamyam 構成と文・新田草子
犬と猫の健康管理、基本のキは?
「人間と同じく犬も猫も予防が肝心です。まず、さまざまな感染症を予防する混合ワクチン接種と、犬の場合は狂犬病予防接種、フィラリアやノミ・マダニなどの寄生虫予防を。フィラリア予防は、犬に対しては注射剤もあります」
また、欠かせないのが健康診断。
「犬や猫は人の4倍の速さで歳を取るとされます。費用や本人のストレスなどの兼ね合いにもよりますが、最低でも一年に1度は受けたいですね」
内容や頻度の目安は下表を参考に。
「そして何より大切なのが、飼い主による日々のチェック。例えば食事や排泄の状況に目を配るだけで、健康状態の変化に気付きやすくなります。爪切りとブラッシングは、脚に関するトラブルや猫の毛球症を防ぐだけでなく、体にいつも触れることでイボなどの異変を早く見つけられるメリットも。さらに、口に触られるのに慣れてくれれば、歯磨きの習慣もつけられます」
ここではそうしたデイリーケアに加え、メンタルウェルネスから介護の備えまで、最新の話題をピックアップ。愛犬&愛猫の健康のために飼い主ができることを、改めて知っておこう。
犬&猫の健康診断、頻度と内容の目安は?
【年齢(目安)2、3~5歳】
●おおよそのステージ:青年期
●頻度:1回/年
●チェック項目:一般検査(体重測定、触診や聴診、視診)と血液検査、クリニックによっては尿&便検査
●備考:ワクチン接種時や、犬なら春のフィラリア検査時にあわせて行うことが望ましい。
【年齢(目安)5~7歳】
●おおよそのステージ:壮年期
●頻度:1〜2回/年
●チェック項目:一般検査と血液検査(内分泌検査含む)、必要に応じて画像検査(X線、CT)など。
●備考:シニアからに多いホルモン関連の不調のチェックを始める。また、このタイミングで一度歯科検診を受けると安心。
【年齢(目安)7~10歳】
●おおよそのステージ:中年〜シニア期
●頻度:2回〜/年
●チェック項目:これまでの検査に加え、必要に応じて心臓の精密検査や血圧測定など。
●備考:シニア食への移行など、フードの見直しも。
【年齢(目安)10歳〜】
●おおよそのステージ:ハイシニア期
●頻度:2回〜/年+α
●チェック項目:体調や持病に応じた治療・検査。
●備考:医師と相談しながら3カ月に1度など一定期間で受診。
1歳くらいまでには、一般検査と先天性の奇形や遺伝的な問題、さらに寄生虫感染やウイルス感染症(特に保護猫)のチェックを。
【押さえておくべき、今どき犬猫ヘルスケア事情。】
歯科ケアはマストの時代。
「犬や猫に虫歯は少ないですが、怖いのは歯周病です。進行して歯ぐきが炎症を起こし、歯の根元にうみが溜まったり、歯を失ったりすると噛む能力が落ちて、寿命を縮める一因に。子どもの頃から口に触って慣れさせ、専用の歯ブラシで歯垢を取るなど口腔ケアを習慣に。おいしい味の付いた歯磨きペーストを使うというのも手です」
それでも手に負えないときは、
「全身麻酔で歯石を除く治療も視野に入れて。検討するなら、体力のある若いうちがおすすめです」
ちなみに犬よりも猫のほうが歯磨きを嫌がりがちだが、
「猫は歯肉炎を起こすウイルスを持っていることが多い。綿棒で奥歯をさっとこするなど、できる範囲でのケアが望ましいですね」
メンタルヘルス 、犬&猫の場合。
新型コロナ禍での暮らしが続く今。飼い主がテレワークで家にいるという新たな生活スタイルが、犬や猫に思わぬストレスをもたらすことがあるという。
「犬だと、飼い主が常に家にいる状況を喜ぶあまり、出勤日などで姿が見えないと不安になって吠え続ける〝分離不安症〟になることが。テレワーク中も時々外に出る、寂しがるなら外出時はTVをつけっぱなしにするなどの工夫を」
反対に猫は、基本的にマイペース。飼い主が四六時中家にいる状態がストレスになることもある。
「自分が家にいると必ず吐くなど、おかしいと思ったらひとりの時間を増やしてあげましょう」
適度に距離を置くことも、愛情表現のひとつと心得よう。
思わぬ場所での寄生虫に注意。
「愛犬とリラックスしたい、とキャンプに行く人が増え、人や犬がマダニに噛まれるトラブルも生じています。マダニは犬や猫、人などの哺乳類が感染する、重症熱性血小板減少症候群という怖い病気を媒介する節足動物。季候を問わず通年活動しているので、初冬のキャンプでも油断せずに。予防薬を使用してから出かけましょう」
ちなみに室内飼いの猫でも、網戸や戸の隙間越しに外猫からノミをもらうことが。多頭飼いだと他の猫にもうつるので注意したい。
肥満解消で幸せ度アップ。
「太り気味の犬や猫が増えていることも心配です」と、小林さん。
「肥満が進むと、関節疾患や糖尿病、心臓病など、人間でいう生活習慣病の原因に。成犬や成猫で胴体が丸々としている、お腹が垂れているなどの状態は要注意です」
解消法は食べ過ぎと運動不足を改めること。これも人間と同じ。
「ただ、急に運動を増やすと関節を傷めることが。一番確実なのはカロリー調整。おやつをやめたり、フードの量を管理するだけでかなり改善します。ダイエットに成功すると体が軽くなって活動的になり、犬も猫も表情が明るくなるんです。実際、痩せると幸せホルモンが増えるという研究も」
喜ぶ顔が見たくてつい与えたくなるおやつ。でもぐっと我慢を。
手作り食を与えるときの注意は。
自宅で過ごす時間が長くなり、犬や猫にも手作りの食事をと考える人が増えている。栄養バランスなどはどう考えるべき?
「犬も猫も本来は肉食動物。ビタミンCは腸内で作れるため、健康なら食べ物から摂る必要がなく、また、唾液にアミラーゼが含まれないので炭水化物の消化が人間より苦手。ただ、犬は雑食になりつつあり、比較的手作り食を利用しやすい。一方で猫は完全肉食なので手作り食は難しい面があります」
そうした違いを踏まえた上で、
「経歴と実績を持つ、獣医師やブリーダーにレシピをもらうのが望ましいですね。手作りをうたう市販のフードもすべてが安全とは限らないので、やはり獣医師などに相談するのが安心です」
ペットからコロナはうつるの?
時節柄気になるこの話題。
「実験では猫同士に感染があり、また、海外では人からペットにうつった例も報告されています。犬よりも猫のほうが症状がやや重いとされていますが、命を落としたケースはなく、犬や猫が人への感染源になることもないようです」
過剰に心配しなくてもいいと言えそうだ。それよりも、
「飼い主が新型コロナに感染し、犬や猫の世話ができなくなることのほうが大変。ペットのためにも感染予防を心がけたいですね」
『クロワッサン』1056号より