腰痛には、テニスボールを使ってトリガーポイントを刺激。
撮影・小川朋央 スタイリング・高島聖子 ヘア&メイク・高松由佳 モデル・保谷サチエ 文・石飛カノ イラストレーション・山口正児 監修・伊藤和憲
痛みや不調の症状が現れる部分と真の原因となる部分は必ずしも一致しない。それがトリガーポイントという考え方。トリガーポイントは文字どおり、痛みや不調の「引き金」となる部分で、そこに適度な刺激を入れることで不調を根本から改善する。
「トリガーポイントはとくに抗重力筋と呼ばれる筋肉に多く存在しています」
と言うのはトリガーポイント鍼治療の第一人者、伊藤和憲さん。抗重力筋は重力に逆らってカラダを支えている筋肉のこと。左のイラストがその代表的な筋肉だ。
「抗重力筋には筋肉を縮めたり伸ばすためのセンサーが多く存在していて、自律神経の交感神経の影響を強く受けています。ストレスがかかって交感神経の活動が高まると、抗重力筋が緊張してこりや痛みが生じやすくなります」
この状態が長く続くと、原因不明の慢性痛や不調に繋がる。逆にいえばトリガーポイントを刺激して緩ませれば、自律神経が整って不調改善が狙えるというわけ。
「肩こりや腰痛だけでなく、下半身の冷えやホルモンバランスの乱れ、マスク生活による顔のこわばりといった症状の改善や予防にも応用できます」
トリガーポイントケアの基本
●トリガーポイントを刺激したとき、 普段感じている症状が出るとベター。
● 1部位への刺激は5〜10秒を1セット とし、 1日5〜10セット 。
● 場所はあくまで目安。 周囲の痛い部分を探しながら刺激を 。
● 刺激するときは、 痛気持ちいい程度に 。
● お風呂あがりなど リラックスしているときに 行う。
↑使うのはこれ
大きな部位はテニスボール、小さな部位はゴルフボール、ピンポイントで刺激したいときは爪楊枝を直径2cmほどに束ねた爪楊枝鍼で。
トリガーポイントが多くある抗重力筋とは?
今回刺激するのはAからKの抗重力筋に存在するトリガーポイント。側頭筋、咬筋といった顔の筋肉は抗重力筋ではないが、顔のこわばりに影響する部位として刺激する。
(A)胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
耳の後ろにある骨から鎖骨に向かい、額を前に突き出したときに緊張する筋肉。
(B)肩甲挙筋(けんこうきょきん)
首の側面、真ん中よりやや後ろ側。肩をすくめたときに収縮する筋肉。
(C)僧帽筋(そうぼうきん)
首と肩の中間、手を反対側の肩に置いたときに触れるところ。肩をすくめたときに収縮する筋肉。
(D)腸腰筋(ちょうようきん)
背骨と大腿骨をつなぎ、股関節を屈曲したときに収縮する筋肉。
(E)脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
背骨の外方2〜3cmにある大きな筋肉。体幹を伸展したときに収縮する筋肉。
(F)腰方形筋(ようほうけいきん)
肋骨と骨盤をつなぎ、体幹を側屈するときに収縮する筋肉。
(G)腓腹筋(ひふくきん)
下腿の後ろ側にあり、足関節を底屈したときに収縮する筋肉。
(H)ヒラメ筋
すねの後ろ側、腓腹筋の深層にある筋肉。
(I)梨状筋(りじょうきん)
お尻中央の深層筋。股関節を外旋したときに収縮する。
(J)内転筋
内ももの付け根から膝に向かって走る筋肉。股関節を内転するときに収縮する。
(K)ハムストリングス
大腿の後ろ面全体。股関節の伸展と屈曲を担う筋肉。
(L)側頭筋(そくとうきん)
左右のこめかみ周辺。歯を食いしばるときに緊張する筋肉。
(M)咬筋(こうきん)
顎の部分にあり、奥歯を噛み締めたときに盛り上がる筋肉。
(★)大腿四頭筋(だいたいしとうきん)
大腿の前面を取り囲む強く大きな筋肉。膝関節の伸展を担う。
[悩み]腰痛
腰回りの3つの筋肉をテニスボールで刺激。
(D)を刺激
太ももを引き上げる腸腰筋は背骨と太ももの骨を繋ぐ大きくて長い筋肉。仰向けになり、おへその横から左の鼠径部周辺にテニスボールを手でコロコロ転がしてマッサージ。反対側も。
(E)を刺激
首から骨盤にかけて走っている脊柱起立筋の下部を刺激。仰向け姿勢で背骨の外側2〜3㎝、左の腰の部分にテニスボールを挟んでコロコロ転がす。反対側も同様に。
(F)を刺激
腰方形筋は姿勢の維持や重いものを持つときなどに働く、こりやすい筋肉。左を下に横向きに寝て、わき腹にテニスボールを挟んでコロコロ転がす。反対側も行う。
『クロワッサン』1051号より