草笛光子さんの美しさと健やかさを保つ習慣。
撮影・天日恵美子 スタイリング・清水けい子(アレンジメント K)、ヘア&メイク・中田マリ子(ヘアーベル) イラストレーション・塩川いづみ 文・一澤ひらり
老いは億劫との戦いだから、体と対話することが必要ね。
なんという87歳! ポールダンスのポールを握り、ハイヒールで片脚立ちをしながら、いとも軽々と脚を上げているのは草笛光子さん。
「元気で悪かったわね(笑)。でも、明らかにステイホーム太りしちゃったの。以前の自分はもっとシャキッとしていたし、背筋もピンと伸びていた。それができなくなっているのが、すごく悔しい。ばかやろう! こんなものに負けてたまるかって。だから私、ここから生き直そうって決めたのね。やり直しに年齢は関係ないのよ」
まずは体を鍛え直す。もっとも草笛さんは70歳を過ぎてから15年以上もパーソナルトレーナーについて週1回、2時間のトレーニングを続けてきた。
「自粛生活で2カ月はお休みしたけど、その後は再開して続けています。でも、老いは億劫との戦いなの。その戦いにトレーナーも参戦してくれて、叱られながらやっています。いわば愛のムチ、私の怠け心を奮い立たせてくれるんです。ありがたいわね。それに死ぬときは人に迷惑をかけず、コロッと逝きたいから体は鍛えないとダメでしょ」
トレーニング内容はその日の草笛さんのコンディションで変わるが、必ずバランスボールで体の軸を整える。
「ごはんを食べるときもバランスボールに座って食べなさいって言われて、それは無理って思ったけれど、意外にできるのね。お行儀が悪いけどやってます」
朝、パッとは起きません。 10分以上体をほぐします
体を守る。仕事を守る。全部ひっくるめて自分のためだから、と話す草笛さん。毎朝の習慣は、目覚めたらベッドで10分かけて体をもみほぐすこと。
「手の指を1本1本、揉んだり回したり曲げたりすることから始めます。それから徐々に耳に背中に腰、全身をほぐしていくんです。これは私のオリジナル。その後は仰向けのまま背伸びをして、手の指先、足の指先まで思いきり伸ばして、ストンと息と力を抜くのね。気持ちいいわよ」
東京オリンピックの聖火リレーランナーとして、6月に地元の横浜市内を走る予定だった。
「トレーナーが家の近くに200m区間を考えてくれて、できる限り毎日速足で往復していたんです。残念ながら走れなかったけど、筋肉がついたことは私の体を守ってくれますね。毎晩自宅の階段の上り下りもしているのよ」
今秋、公開予定の映画『老後の資金がありません!』で、草笛さんは浪費家の姑役を演じる。
「みんなをかき回す役だけれど、天海祐希さんが演じる主人公と別れるとき、『人間わがままに生きるのが勝ちよ』って言ってウインクするのね。その言葉が私自身と重なって、『そのまんま光子』でいいんだって思えました。もうね、この歳になったらタガを外して、飾らずに、笑って生きていこうって」
草笛光子さんの元気をつくる習慣。
【朝】体の中心から遠い部分から目覚めさせる。
朝は、ベッドから出る前に、手の指先や耳などを揉みほぐしてから起き上がる。「そうすると体がびっくりしないので、一日じゅう調子がいいのよ」と草笛さん。
【昼】食事もお茶を飲むのもボールの上で。
パーソナルトレーナーの指導で、日中はバランスボールが椅子代わり。食事をとるときもボールに座って。背筋が伸びて体幹が鍛えられる。もう15年来続けている。
【夜】皆が寝静まったら秘密トレの時間。
夜は、自宅の階段を、土踏まずより先だけで上り下りしてトレーニング。家にときどき遊びに来る、ジャズダンサーの名倉加代子さんに教えてもらった方法。
『クロワッサン』1051号より