“いっそ着たい服を着よう!”、引田かおりさんが今、選ぶ服。
撮影・青木和義 文・中沢明子
素敵な街の景色の一部に自分もなれるように、 今の自分に合った服を。
ギャラリーとパン屋を経営する引田かおりさんの、意思あるライフスタイルに憧れる人は多い。ファッションについても確固たる考えを持つ引田さんだが、意外にも今のスタイルは歳を重ねてから固まってきたものだという。
「55歳くらいだったかしら。今までの服が突然似合わなくなり、悩みました。少し投げやりな気持ちになったけれど、“いっそ着たい服を着よう!”と気持ちを切り替えたんです。
もともと服が好きだし、歳を重ねても流行は少し取り入れたい。ただし、やみくもに着たい服を選ばず、きれいな色を選び、首周りがくすんできたら首は目立たないように、自分自身が古いんだから古着はやめておこうとか(笑)、ちょっとした心がけとともに、服選びをしています」
着心地がよいのが必須条件だが、さらに“人から褒められる”装いでいることも重要だという。
「だって、“素敵ね!”なんて言われたら、その日一日、元気になれるでしょう? 服はコミュニケーションツール。私は自分も街の一部と考えているので、素敵な街に溶け込めるように、元気に過ごせるように、服の力を借りたいと思っています」
一方で「自分の気持ちを自分で盛り上げる」大切さについても、最近考えるようになった。
「コロナ禍で人と会わないからって何を着ていてもいいのかな?と思ったんです。時にはふさぎ込む日もありますが、人や社会のせいにしたくはありません。だから、好きな服を選んで、シャーリングの袖口がかわいいな、柄のワンピースを着るとうれしいな、といった、ささやかな楽しみを日々、感じていたいですね」
『クロワッサン』1053号より