患者力を上げるための心得と今日から実践できる受診のコツ。
取材 文・ 馬場さおり イラストレーション・楠伸生 撮影・小笠原真紀
具合が悪くて病院に行っても、うまく症状を伝えられなかったり。体の違和感をなんとなく覚えているものの、遠慮して言い出せなかったり。医師が話していることをよく理解できていないのに、「わかりました、大丈夫です」と、つい答えてしまったり。意外とあるこれらの状況は、医療に対するあなたの受け身姿勢に原因があるかもしれません。
一昔前まで、「医療は受けるもの」でしたが、実は今、「医療は参加するもの」に変わってきています。医療従事者にお任せだった従来と異なり、医療に積極的に参加することが患者に求められているのです。どう医療に参加していけばいいのか、患者としての心得や意識改革について、患者の主体的な医療参加をサポートする認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML(コムル)の理事長、山口育子さんにお話を聞きました。
「今は、患者とその家族も含めて医療に取り組むという『チーム医療』の時代です。患者もチームの一員だからこそ、適切に薬を服用したり、生活習慣を見直したりと自分にできる努力をしながら、役割意識をもって積極的に医療に参加していくことが大切です。そのうえでまず大切なことは、病気は人に代わってもらえないと自覚すること。病気の内容や進行度によってはすぐに受け入れられないこともあると思いますが、自分は自分という命の主人公であり、身体の責任者だからこそ、最終的に病気に対して自分の持ち物だという自覚を持つことが重要です。また、自分はどういう医療を受けようか、あるいは受けないのか、自分自身でしっかりと考えることも重要です。そして、考え出した結果を『私はこういう理由でこういう治療を選ぼうと思います』と、医師に伝えること。さらに、もしも治療を受けると決めたのなら、医療者ときちんとコミュニケーションをとって協働していくこと。一生懸命に医師が説明しても、患者が聞く耳を持たなければ意味がありません。自分にできる自分の役割を果たしながら、チーム医療の一員として努力をしましょう」
賢い患者になるために患者力を上げるための意識改革
「医師とのコミュニケーションがうまく取れない、というお悩みをよく耳にしますが、これはとても危険なこと。わからないことをわからないまま放置したり、感じている違和感を伝えられなかったりすることで、医師と患者との間に医療に対する認識の差が出てしまいます。例えば『比較的よく効く抗がん剤』と聞いたとき、患者は70%くらいの確率でがんが消えてなくなると期待したとします。しかし、医師は30%くらいの確率でがんが少し小さくなる程度に考えているかもしれません。この認識の違いを引きずったまま抗がん剤治療を受け続けたとしたら……認識の差は医療にとって、不必要な不信感を生むことになりかねません。だからこそ、医師とのコミュニケーションではわからないことは質問し、認識の確認を行うことが大切。これを実践しやすくするコツとして、受診の際はメモを取ることをおすすめします。受診前に、医師に伝えたい情報や症状を書き出しておくことによって伝え漏れを避けられますし、『忘れやすいのでメモしてきました』『忘れないうちに書き留めていいですか』と言うことで、メモが取りやすくなります。医師が耳慣れない言葉を使ったら、欠かさずメモを取り、質問をし、確認をすることが患者力を上げる確かなステップになります」
患者力をつける3つのポイント
かかりつけ医を見つけるコツは、 予防接種でクリニックと医師をチェック。
いざというときに頼りになる、かかりつけ医。その見つけ方は、インフルエンザの予防接種の機会を利用するのがおすすめです。まず、近所にあるクリニックから5つほど候補に挙げ、電話で「予防接種はいつ頃からされていますか?」「おいくらですか?」など、質問してみましょう。そのときの電話応対をチェックして、違和感があれば候補から外します。そして、毎年それぞれの絞ったクリニックに予防接種に通います。実際に医師に会って相性を確認し、自分の求める医師像にマッチしたら、そこをかかりつけ医とします。
Dr.クロワッサン「逆引き病気辞典」(2019年10月10日発行)より
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