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楽しみながら脳の機能をアップする5つのワーキングメモリトレーニング。

「ワーキングメモリ」とは、単に記憶するのではなく、何かの作業をするために一時的に情報をとどめておく働きのこと。脳科学者の篠原菊紀さんに楽しみながら脳の機能をアップするトレーニングを聞きました。

イラストレーション・鈴木衣津子 文・嶌 陽子

「脳トレ」「ワーキングメモリを鍛える」というと、難しい問題を解くなどのイメージがあるかもしれない。だが、趣味や習い事、あるいは毎日の習慣など、日常の中で楽しく脳を鍛える方法もたくさんある。少しだけハードルが高いと感じられるもの、無意識のうちにマルチタスクをこなしているようなものなどが最適だ。どんなものがおすすめか、なぜそれがワーキングメモリを鍛えるのかを見ていこう。

新たな語学を習う

【2つの言語の間の行き来が脳トレに。“たどたどしい語学学習”が効果的。】

「バイリンガルの人のワーキングメモリの力は相対的に高くなりやすく、年をとっても認知機能が衰えにくいという研究結果はたくさん出ています。2つの言語を脳の中で変換する、その作業自体が脳トレになっていると考えられています」(脳科学者の篠原さん)

ということは、新たな語学を学んだり、英会話などを習うのはワーキングメモリを鍛えるのに適していると言える。最も効果的なのは〝たどたどしい語学学習〟。

「ネイティブ並みに習得してしまうと、記憶によって自動的に意味を理解したり言葉を発する場面も多くなります。意味を理解しようと必死な時ほど、ワーキングメモリを多く使います。流暢な人が外国語を話す3分と、たどたどしい人が話す3分では、後者の脳活動のほうが圧倒的に活発です」

負担に感じるとストレスになるので、あくまでも楽しく取り組もう。

聞いた外国語を日本語に変換したり、頭の中の日本語を外国語に変換したり。これが脳トレに。
聞いた外国語を日本語に変換したり、頭の中の日本語を外国語に変換したり。これが脳トレに。

お勘定を自分で計算する

【買い物中にゲーム感覚でやってみたい、頭の中での合計金額やお釣りの計算。】

週に何度も行く買い物。すっかり習慣化している行為でも、ワーキングメモリを使っている場面は確実にある。

「たとえば買い物の合計金額が905円だった場合、小銭が増えないよう、1,005円を出して100円玉をお釣りにもらう。1,600円の場合は2,100円を出してお釣りに500円玉をもらう。こうしたことを自然に行っている人は多いはずです。認知機能が低下した人は財布の中が小銭だらけ、という話はよく聞きます。お釣りの計算ができない、もしくは面倒になり、会計時についお札ばかり出してしまうのです」

お釣りを意識してお金を出すほか、さらに脳を鍛えたいのなら、レジに行く前に買う商品の金額を頭の中で足していき、合計金額を計算するのも手だ。端数まで計算するのは負担が大き過ぎるという場合は、概算だけでも大丈夫。ゲーム感覚でやってみよう。

商品を買い物かごに入れるたびに金額を足していき、会計時に答え合わせをしてみよう。
商品を買い物かごに入れるたびに金額を足していき、会計時に答え合わせをしてみよう。

楽器を練習する

【マルチタスクを無意識に行える。ステップアップできる練習法がおすすめ。】

楽譜を読み取り、それに従って手などを動かし、鳴らした音が合っているかを耳で聞き取りながら、楽譜に書かれている次のパートを目で追う……。異なるタスクを次々とこなさなければならない楽器演奏は、脳活動を活性化させる格好の手段といえそうだ。

「楽器を習う際に、意識したいのは、それが少しずつステップアップするようなトレーニングモデルであるということ。たとえばピアノの場合、『バイエル』を全部こなせるようになったら次はもう一段階上の『ブルグミュラー』、その次は『ソナチネ』というように、徐々にステップアップしていきますよね。同じレベルの内容を繰り返していると、脳が慣れてしまい、ワーキングメモリを使わなくなる。ですからステップアップ式の練習であることはとても大事なのです」

これは語学学習にも通じること。習う際には、その点を意識しよう。

ピアノやギターなど、どんな楽器でも、難易度を少しずつ上げていくことがポイントになる。
ピアノやギターなど、どんな楽器でも、難易度を少しずつ上げていくことがポイントになる。
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