ロープを切って救出する!?『なぞとき 脱出ゲーム-Rescue Cut』│山口恵以子「アプリ蟻地獄」
イラストレーション・勝田 文
縛られて天井からロープで吊されている子供。ロープをカットして子供を逃がしてあげるゲームアプリ。
ジャンルで言えば脱出ゲームなので、障害物が用意されている。爆弾、トゲの突き出た板、重石、ジャンピングボード、そして銃を構えたマフィアみたいな見張り役等々。
ロープを切る場所を間違えるとトゲの上に落下したり、爆発に巻き込まれたり、重石につぶされたり、見張りに撃たれたりで、子供は死んでしまう。しかし、上手い場所でロープを切れば、反対に見張りをやっつけて脱出することが出来る。
子供も見張りも撃たれたり刺されたりすると、派手にドバッと血が噴き出す。しかしまったく心が痛まないのは、思いっきりマンガチックで人間味のないキャラのお陰。見張り役は黒のスーツに髭とサングラスでマフィアっぽく決めているのに、間抜けな罠で死んでしまうのが可愛い。
ゲームを続けるうちに、以前ご紹介した『Happy Glass』を思い出した。流れる水とグラスの間に補助線を引っ張って、グラスを水で満たすゲームだ。そして補助線の引き方は、物理の法則に基づいていた。
『Rescue Cut』も物理の法則に基づいているのだろうが、キャラが間抜けなのでお勉強感がみじんもない。私のような理数系オンチの人間には大いに向いている。
それにしてもゲームのキャラは、失敗すると派手に血を流して死んでゆくのに、何度も甦ってやり直せるのだからすごいというか、羨ましい。
人生もかくありたい。トホホ。
山口恵以子(やまぐち・えいこ)●作家。最愛の母と過ごした最期の日々を綴ったエッセイ『いつでも母と』(小学館)。
『クロワッサン』1030号より
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