わずか数日を描いたシンプルなロードムービーだからこそ、純愛として説得力があります。しかも舞台は冬の北陸。なのに本作にはどこかフランス映画を思わせる、オシャレでアンニュイなムードが漂っているのです。ドラマチックな音楽も相まって、北陸らしいちょっと寒々しく湿った風土が、ノルマンディーあたりの景色に見えてくる不思議。これも主演2人の洒脱な佇まいのせいでしょうか。
公開は1972年(昭和47年)。当時アラフォーでパリ生活の長い岸惠子と、テンプターズ解散後、映画監督を志し本作に助監督として参加していた22歳のショーケン。18歳という年齢差は、おじさんと若い女の組み合わせならめずらしくもないけれど、女性が年上のパターンとなるとレア中のレアケースです。だけどこの2人が、意外なことにめちゃくちゃお似合い。フランス社会で揉まれて成熟した真の大人である岸惠子は、ショーケンの自由奔放な、新しいタイプの演技にも、一切動じません。そして黒いタイトなトレンチコート姿が死ぬほどさまになっているショーケンの、「子犬のよう」としか形容しようのないまとわりつき方を見るだに、「こっちがヒロインだ!」と確信。
ショーケンはここから、’70年代を体現するスターになっていったのです。