巨大な葉っぱの頼もしさ、美しさ。│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」
新宿ゴールデン街の飲み友だち・もじゃもじゃは、花園神社の片隅にある一本の木と親しいらしかった。酔うとその木のところへ行って、幹を撫でたり、耳を当てて音を聞いたりする。わたしがその姿を目撃した頃もじゃもじゃは六十代だったけど、木と交流している姿は少年のようだった。最近会っていないが、たぶん今も、新宿で酔えばあの木を撫でていると思う。
植物は酸素を出すし、食用にもなるし、材木にも紙にもなる。それからもう一つ大事な役目が「動物を安心させること」なんじゃないかと思う。とりわけ、太い幹とか大きな葉っぱを見ると「あぁ、頼りになるなぁ」とホッとする。わたしは酔ってしがみつく木は持っていないけれど、旅先で手にした地図に「大イチョウ」なんて記されていると、つい足を延ばして見に行ってしまう。桐や朴の大きな葉っぱが落ちていたら、いそいそと拾いあげてしまう。
「メガロマニア植物学」展の会場に並ぶ巨大な乾燥標本たちも、じつに頼もしかった! 直径1メートル以上あるパラグアイオニバスの葉っぱ、ゆうに2メートルの長さに成長したタビビトノキの葉っぱ、人の頭サイズの松ぼっくり…。これらを採って、運んで、乾燥させ、原型を留めた形で美しく展示した人たちの手間暇にも圧倒される。パラグアイやマダガスカルに行かないと生きている葉っぱには会えないのかと思いきや、採集地は小石川植物園や神代植物公園だという。今度、巨大な葉っぱ(生)たちにご挨拶しに行こう。
特別展示『メガロマニア植物学』
インターメディアテク2階(東京都千代田区丸の内2-7-2 KITTE2・3階)にて10月6日まで開催中。TEL.03-5777-8600 11時〜18時(金・土曜日は〜20時) 月曜休館(8月12日、9月16日は開館)、その他館が定める日は休館 無料 http://www.intermediatheque.jp/
金井真紀(かない・まき)●文筆家、イラストレーター。最新刊『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)が発売中。
『クロワッサン』1003号より
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