予測不能な筒井ワールドを 斬新な展示でひもとく。世田谷文学館『筒井康隆展』(文・ペリー荻野) | トピックス | クロワッサン オンライン
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予測不能な筒井ワールドを 斬新な展示でひもとく。世田谷文学館『筒井康隆展』(文・ペリー荻野)

  • 文・ペリー荻野
筒井康隆『シナリオ・時をかける少女』原稿 1983年 原作者の筒井さん自身が、同年公開された映画をシナリオ形式でパロディ化したもの。。

これまで私は文学系の展覧会で「煙に巻かれる」経験をしたことがなかったが、「筒井康隆展」では、大いに煙に巻かれた。巻かれて笑った。

展示は実にきめ細かい。大阪生まれの筒井は小学校時代IQ 187だとわかって特別授業を受けるも、学業からどんどん横道にそれていく。それは主にエノケンやマルクス兄弟などの喜劇なのだが、一方で「家族で」SF誌を創刊。やがて人気作家になる過程を、年次パネルで紹介する。「父に水虫をうつされる」「耳を動かせる」など来場者の心をくすぐるエピソードの数々も素晴らしい。しかし、当の本人はずっと役者になりたいのである。84歳の今もなお!

つつい・やすたか●1934年、大阪生まれ。主な作品に『家族八景』『虚人たち』『文学部唯野教授』『聖痕』がある。 撮影・網中健太

文房具とイタチが壮絶な戦いを繰り広げる長編「虚航船団」などの直筆原稿とともに「時をかける少女」など単行本も並び、一点ずつ見入ってしまう。作風はSF、ブラックユーモア、パロディ、純文学、エロ、風刺、歴史などなど、カオス状態だ。かの星新一先生も、筒井作品は明らかに面白いとしか言いようがないと評していたが、本当に言いようがない。

筒井さんが描いた作品の数々。SFの枠を超えた実験小説で、エンタテインメントと純文学の垣根を越境する。

思えば筒井康隆を知ったのは、山下洋輔、赤塚不二夫、タモリなど「ふざけているのかまじめなのかわからないが、いつも面白がってるおじさん集団」としてだった。ぷっつんして断筆宣言(’93年)すれば「断筆祭」を開催、深田恭子の「富豪刑事」や二時間ドラマにもひょいひょい出る。面白がりの性格は変わらず、作品の広がりは今も予想不能。「私の展覧会に寄せて」の冒頭の言葉は「ああびっくりした。『私の展覧会』などというものがあってたまるものか」である。さすが先生。ますますわかんないけど、面白い。それがよくわかる展覧会です。

『断筆宣言』記念人形 1993年 差別的表現を巡るマスコミの対 応に「断筆宣言」で抗議。記念人形は雑誌の表紙にも使われた。
『筒井康隆断筆祭』記念の手ぬぐい 1994年 デザイン・和田誠 ’94年に開催された”断筆祭”を記念して作られた手ぬぐい。デザインは和田誠さんが担当。

『筒井康隆展』
世田谷文学館 ~12月9日(日)まで
世田谷文学館(東京都世田谷区南烏山1-10-10)にて12月9日まで開催中。筒井さんのこれまでの歩みを年表や初公開の原稿や資料などとともに展示。03-5374-9111 営業時間10時~18時 月曜休 料金・一般800円

ペリー荻野(ペリー・おぎの)●1962年、愛知県生まれ。大学在学時にコラムを書き始める。近著『バトル式歴史偉人伝』(新潮社)。

『クロワッサン』985号より

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