これまで私は文学系の展覧会で「煙に巻かれる」経験をしたことがなかったが、「筒井康隆展」では、大いに煙に巻かれた。巻かれて笑った。
展示は実にきめ細かい。大阪生まれの筒井は小学校時代IQ 187だとわかって特別授業を受けるも、学業からどんどん横道にそれていく。それは主にエノケンやマルクス兄弟などの喜劇なのだが、一方で「家族で」SF誌を創刊。やがて人気作家になる過程を、年次パネルで紹介する。「父に水虫をうつされる」「耳を動かせる」など来場者の心をくすぐるエピソードの数々も素晴らしい。しかし、当の本人はずっと役者になりたいのである。84歳の今もなお!