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中嶋朋子さんの人生の道しるべとなった、ミヒャエル・エンデ。

  • 撮影・岩本慶三 文・嶌 陽子 ヘア&メイク・新田美佐子

もうひとつ、大きな気づきとなったのは、本の題名にも入っている“余白”についてだ。

「すごく完璧主義者だった自分が、余白の大切さに気づくようになりました。余白、つまり遊びの部分がないと、自由に動けなくなってしまうなって。お芝居でもそうです。キャラクターを作りきらず、余白を持たせておくと、演じている時に、不思議とそこが埋まるんですよ。言葉では表せないんですが、相手役が投げてくる何かで埋まったり、舞台だと客席からの反応で埋まったり。それが美しいなと思う。私たちって、空いているところがあると、つい心配になって、いろいろなものを詰め込みたがりますよね。余白を作ることは、持っているものをあえて手放す行為を伴うので勇気がいるけれど、結果的には自分が思っている以上の恵みがやってくると思うんです」

「装丁の美しさも魅力」と中嶋さん。上から、『ものがたりの余白』 『エンデ全集18 エンデのメモ箱 上』『エンデ全集19 エンデのメモ箱 下』『はてしない物語』(以上ミヒャエル・エンデ著/岩波書 店)。『ものがたりの余白』『エンデのメモ箱』は岩波現代文庫、『はてしない物語』は岩波少年文庫もある。

作家と女優。形は違えども、創る人、表現する人という共通部分においても、中嶋さんはエンデから多くの力をもらっているようだ。

「彼は、“作家とは、難破した船の遭難者だ”と言っているんです。つまり、挫折を経験しなければ、真の芸術は生まれないと。この言葉を読んで、責任も感じましたし、勇気をもらえました。しかも、“難破する”ことを“裸のお尻で砂利の上にしりもちをついたことがなければならない”と表現してくれるところがたまらない。そうだよね、それは痛いよねって(笑)。“失敗は成功の元”なんて言われるより、よっぽど心に残りますよね。そんなちょっとしたフレーズからも、ユーモアの大切さをいっそう実感できるし、エンデの“物語”の力に圧倒されるんです」

『クロワッサン』955号より

●中島朋子さん 女優/1971年生まれ。1981年よりテレビドラマ『北の国から』の蛍役に。その後、映画、舞台などで幅広く活躍。近年は音楽とコラボレートした古典の朗読劇にも取り組む。

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