広々とした雰囲気を生み出している、もうひとつの大きな要素は、家を取り囲む草木の数々。1階のデッキに置かれた山野草や、2階の寝室テラスから手が届きそうなヤマボウシの木。200種類以上はあるという植物に囲まれた家は、外との境界が緩やかで、実際以上に広く感じられる。
実は、これらのほとんどが、植物好きの佑子さんの希望で、前の家の庭から、そのまま持ってきたものだ。
「私は、『庭と一緒に引っ越せるなら、家はどうでもいい』って言ったの。間取りやつくりに関しては、一言も口出ししませんでした。家は、完成して初めて見たくらいですから」
造園家の田瀬理夫さんに依頼し、前の庭に育っていた草花を表土ごと、新しい家に移植した。圧巻は、公道から家屋へと続く15mほどの小道。いわゆる「旗竿敷地」である土地の「竿」にあたる部分を、佑子さんが長年大切にしてきた山野草で埋め尽くしたのだ。月日が経つにつれ、草木は成長し、今や緑のトンネルのようになっている。
「昔の永田は、植物といったら、松とチューリップぐらいしか知りませんでしたよ(笑)」
そう佑子さんが振り返る夫が、やがて「外とのつながりを重視し、自然を生かす家づくり」を信条とするようになったのは、佑子さんと、佑子さんがつくった庭の影響が大きかったはずだ。