くらし

才能のやりくり。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

そこにいるだけでお金がかかるというのは、経済的な自立をしたとき初めて知った。

手元にお金が残らなくても安心して生きていける北欧などとは違い、日本ではそこにいるだけでかかるお金とは別に、まともな生活をするために確保すべきお金が必要だ。

私は、学生の頃から、いかに少ないお金で生活するか、ということを考えてきた。私学の美大に通わせてもらっただけでも、両親には無理をさせていたので、親元を離れて暮らしていくための仕送りはなく、4万7千円の奨学金と週2回ほどのアルバイトで、家賃と光熱費、課題制作の時に必要な素材の購入、そして大学の外で広告の勉強のために通った塾の受講料、更には自身のコンピュータを1台買うため、コツコツと貯金までした。百円で一日の食費を賄うということもしたし、大学に「要らないもの(食糧、服)ください」の貼り紙をし、友人たちにも助けてもらった。

一時期は定収入を得られるような職を得たこともあったが、性に合わないようで、体調も崩し気味になったこともあり、経済的に不安定な生活を選んだ。

そうやって私は今まで、経済活動の才能より、最低限のお金でやりくりできる才能の方を生かし、ギリギリの生活をしていてもやりたいことは絶対にやる、ということを叶えてきた。

これができるようになると、不安がなくなる。どんなにたくさんお金を持っていても、不安がある人たちがいることを思うと、私はすごい才能を手に入れたのかもしれない。お金を稼ぐ才能はないけれど、やりくりができる才能は、年収数百万円の価値があるということになる。やりくり上手のパートナーを持つ人は、その価値を理解すべきだ。

経済的なことに限らず、「やりくりの才能」とは、足りない部分を認識し、それを何をもって補うかのアイデアがあるということ。それぞれの足りない部分を、相手の価値ある才能で埋めてやるような「才能のやりくり」をすることで、尊敬の関係が築かれ、パートナーシップも上手くいくのだと思う。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は、https://www.facebook.com/imostudio.imo/にて。

『クロワッサン』1002号より

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