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5年目には流行が流行でなくなる――宮本悦也(流行学研究所)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、流行のメカニズムを紐解いてみましょう。

文・澁川祐子

1978年6月10日号「流行学による着こなし 5年前の服」より
1978年6月10日号「流行学による着こなし 5年前の服」より

5年目には流行が流行でなくなる――宮本悦也(流行学研究所)

「流行は繰り返す」とは、よく言われること。ならばそのメカニズムを知って、昔の服を上手に取り入れよう、という特集が組まれています。

流行のサイクルを示す指標の一つが、スカートの丈。構造心理学者で、流行学を研究している宮本悦也さんは、これまでのスカート丈の傾向をグラフで示しながら、5年でロングからミニ、ミニからロングへと移行すると解説しています。

その実態として、1年目は新しいもの好きの一部の女性たちの間でミニが流行する。2年目は流行に敏感なヤング層、3年目になると流行に敏感なミセス層と控えめなヤング層に受け入れられる。

4年目には控えめなミセス層も着るようになり、5年目は誰もがミニをはいている状態になる。だから、「5年目には流行が流行でなくなる」のです。もちろん、その頃には新しもの好きの人たちは別のものに目移りして、次なる流行の1年目に突入していくというわけです。

特集が組まれた1978年は、ロングからミニへ移行する過渡期。それだけにロングとミニの中間にあたる膝丈が主流だとしています。そこで5年前のフレアースカートにペチコートをプラスしたり、野暮ったく見えるワンピースの長袖を思い切ってカットしてリメイクしたりと、涙ぐましい活用術が紹介されています。

ファストファッション全盛のいま、流行を取り入れるのは簡単です。しかし当時は、そうもいかなかったのでしょう。流行はめぐれど、消費のしかたは変化したことを浮き彫りにした誌面でした。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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