コーディネーター・青木由香さんが選ぶ体にやさしい台湾の料理。野菜と滋味たっぷりで胃腸も心も安らぐ一皿。
撮影・青木和義 コーディネート・青木由香
【雙連駅】燕山湯圓(イェンシャンタンユェン)
朝市見物後の小腹満たしは名物スープで。
取材や観光で多いのは「朝市を見たい」というリクエスト。
「雙連(シュアンリェン)市場はアクセスも良く、規模も雰囲気もちょうどいいのでおすすめです。散策の後に小腹が減った、でもランチは予約してあるし……という悩ましい時間帯とお腹具合なら迷わずここへ」
名物の肉団子スープはもちっとした団子に濃厚な肉餡、汁はあっさりで好相性。合わせるのは意麺(平打ちのちぢれ麺)だ。
「汁麺もありますが、汁なしで意麺の味を楽しんでみて。にぎやかな市場の一角というロケーションもいい。台湾らしい軽食です」
【國父紀念館駅】光復市場素食包子店 (グアンフーシーチャンスーシーバオヅディエン)
野菜の深い味と底力を堪能する饅頭。
野菜が持つ、食材としてのパワーを感じる饅頭がある。青木さんは愛をこめて「べジマン」と呼ぶ。
「野菜だけというイメージからは程遠いといってもいい(笑)。食べたときの充実感がすごいんです」
中でも青木さんの一押しはいんげん豆まん。こまかく刻んだいんげんと黒キクラゲの歯ごたえが小気味いい。味が染みた焼き麩のかけらも、濃厚な風味の一助に。たっぷりの具をしっかり包み込む、むっちりふんわりの皮も、粉もの好きなら声を上げて喜ぶはずだ。
早朝から客が列を作り、昼前に売り切れることも。早い到着が吉。
【雙連駅】人和園雲南菜 (レンハーユエンユンナンツァイ)
リピート率はぴかイチ。あのスープを求めて。
繊細で澄んだ鶏のスープに、豆の粒が美しく浮かぶ印象的な一皿。台湾好きの間では「あの豆のスープ」として愛されている。
「私も最初、本当に感動しました。みずみずしくて、口の中で豆の香りがプチプチ弾ける。こんな豆の味わい方があるのかと。以来、皆に必ずおすすめし続けて、今や人気メニューに。作るのが大変、と店主は笑っていますが(笑)」
店のルーツは店名にもある中国・雲南。野菜やキノコ類の使い方が上手かつ個性的だそう。
「好物があり過ぎて、新規メニューを開拓できないのが悩みです」
【東門駅】奇福扁食(チーフービエンシー)信義店
気遣いと、安定安心の美味。ワンタンを食べるならここ。
初めて台湾に来た17年前。慣れない生活の中で、青木さんの胃袋だけでなく心も癒やしたのはワンタンの専門店。
「清潔でこざっぱりした店内、注文方法もわかりやすく、それだけでもう、安心できた。そんな店の姿勢は料理にも表れていて、盛り付けが常に丁寧なんです」
ぷりぷりのワンタンの味はもちろん確かで、澄んだ豚骨スープは見た目よりしっかりしていて満足感がある。だが塩辛かったり、しつこかったりはしない。
「一見すべてが普通なのですが、実は隅々まで心が行き届いている良店。今も通い続けています」
青木由香(あおき・ゆか)●コーディネーター。昨今の台湾ブームはこの人から始まったとも言える存在。2015年にはギャラリースペースが併設されたセレクトショップ『你好我好(ニーハオウォーハオ)』もオープン。
*1台湾元=約3.6円(2019年2月22日現在)
『クロワッサン』993号より
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