くらし

欧州拠点の女性美術家の独創性を堪能。国立新美術館 『イケムラレイコ 土と星 Our Planet』

  • 文・浦江由美子
頭から生えた木 2015年 個人蔵 人、動物、植物の多様なクリーチャーをテラコッタ彫刻で表現している。

イケムラレイコというアーティストを知っているだろうか? 欧州を中心に活動し、世界的にも高い評価を受ける美術家だ。

暗闇に佇む孤独な少女、お化けや怪物とも捉えられるクリーチャーたち、山水画を彷彿とさせる大スケールのペインティング……。激変する現代、彼女のこれらの作品が注目されるのは、人の心に潜在的に備わった不安や祈り、生きものや自然への深い愛情が込められているからだろう。

彼女が創造する世界は国境や国籍、さらにジェンダーの境界線を超えた途上に潜む。

うねりの春 2018年 作家蔵 190×290㎝の大きな絵画は自然も人も動物も共存するユートピア的なランドスケープの1作品。

現在開催中の『イケムラレイコ 土と星 Our Planet』は、支配的な社会から解放され、平和な地球や未知なる宇宙までへの願いが絵画や彫刻、写真などにより構成されたインスタレーションとなっている。

三重県出身のイケムラさんは、’70年代に当時では珍しくスペインに渡る道を選んだ。かの地で絵画を学び、その後、スイス、ドイツと欧州のさまざまな国で暮らし、女性として、異邦人として、日々の生活から作品が生まれてきた。ベルリン芸術大学絵画科教授に就任した1990年には、日本で培われた感性が顕著に表れた作風を発表し、作家としてもターニングポイントを迎えている。

花 2009/18年 作家蔵 生き生きしている花よりも朽ちていく状態、もののあわれを好むイケムラさんの代表的な写真作品。

長く険しい作家の道を着実に歩んできたイケムラレイコの、40年にわたる集大成と呼べる今回の展覧会、手がけてきたさまざまなメディアでの研ぎ澄まされた表現を、充分に堪能していただきたい。

『どこにも属さないわたし』(平凡社)は、伊勢での幼児期から渡欧まで、作家人生の葛藤と作品誕生の経緯が綴られる初の回想録。

『イケムラレイコ 土と星 Our Planet』
国立新美術館 ~4月1日(月)
国立新美術館 企画展示室1E(東京都港区六本木7-22-2) 電話番号03-5777-8600 10時~18時(毎週金・土曜は~20時) 火曜休館 一般:1,000円 イケムラレイコの大規模な個展として約210点を展示。

『クロワッサン』990号より

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