一般的な生活費なら問題なし。でも、感情論なので厄介。
生前贈与とは、生きているうちに財産を子や孫に渡しておくこと。遺産分割の際、特定の贈与に限っては無期限に遡って相続財産に加え、“遺産の前渡し”に当たるとみなす。特定の贈与とは、例えば、住宅取得等資金や結婚資金、独立開業資金など、高額な資金の贈与があった場合。その全額が相続財産に加えられ、遺産の分け前は減額される。これを“特別受益の持ち戻し”という。
「C代さんの場合は、一般的な生活費として援助してもらっていた範囲内なので、生前贈与の範疇に入らないと思います。シングルマザーで子どもの養育費にもお金がかかり、一人ではどうしようもない状況を、扶養義務者として父親が世話をしてあげていたというケース。一般的な生活費や学費であれば、法的には問題ないでしょう。ただ援助金額が異様に高かったり、収入があるのに親にあらゆる支出に関して頼り切っていたのであれば、勘案されることも」
一方で、姉の感情も考慮すべき。
「離婚してシングルマザーになったのはC代さん自身の問題で、10年間も生活費全てを親に負担させたのはおかしい、とお姉さんが不満に思ったとしても仕方ありません。姉が強硬な態度に出るのは、長年蓄積した思いがあったからかも。感情問題なので、話し合いで折り合いをつけたほうがいいし、姉の言い分をしっかり聞き、C代さんも引くところは引いてもいいと思います」
それでも解決しないなら、調停や審判などの裁判に持ち込むしかない。
「調停や審判では、きちんと10年間遡って、どれくらいの贈与額があったかを計算し、法的な判断を導いてくれるでしょう。ただ、そこまで行ってしまうと、きょうだいの関係は断絶しがち。時間や労力がかかり、精神的ストレスも相当です。法的手段を取る前に、相手の考えにも耳を傾ける心の余裕を持ち、意地を張らずに話し合いを重ねてほしいです」