本作のスターはなんといっても、怪人めいた容貌で死の匂いを放ちまくる、腰が砕けそうにセクシーな原田芳雄ですが、そこに絡んでくる女たちの、蠱惑的な美しさあってこそ! ヒロインを演じる大谷直子の、清らかなのにどこか不穏な存在感もさることながら、大正浪漫三部作すべてに出演することになる大楠道代のハマり具合が画面の決め手になっています。若い頃から『痴人の愛』でナオミ役を演じるなど怪しげな色気が持ち味の女優でしたが、34歳で出演した本作で見せた、強烈なまでにデカダンな佇まいには圧倒されます。
モガ風のボブカット、囲み目メイクと赤い口紅。洋装も素敵ですが、とりわけ着物が似合う! 映画の後半、出番が増えるに従ってお召替えも多くなり、しかもどんどんコーディネートにも気合いが入って、道代の着物ショー状態に。とにかく、大楠道代を拝むだけでも観る価値アリです。鈴木清順の美学に徹頭徹尾貫かれた作品ゆえ、ものすごい毒気にあてられることを覚悟しつつ、ぜひ!