物を買うとき、値をみて決めてはいけない――宮城昌康(競馬評論家)
文・澁川祐子
物を買うとき、値をみて決めてはいけない――宮城昌康(競馬評論家)
昭和期に競馬予想で名を馳せた、宮城昌康さん(1932-1989)。買いものにまつわるエッセイコーナー「男の買物」に登場し、買いものをするたびに思い出すという父の言葉を紹介しています。その一部を抜きだしたのが、今回の名言です。
ちなみに父の宮城新昌氏は、渡米してカキの養殖技術を学び、日本で近代的カキの養殖を確立した人物。なお、姉には料理研究家の尚道子氏、食生活ジャーナリストの岸朝子氏がいます。
宮城さんが父からこの言葉を聞いたのは、小学校低学年のとき。父とふたりで野球道具を買いに行き、長時間迷ってようやく買いものをして帰宅したあとのことだったといいます。
<物を買うとき、値をみて決めてはいけない。まず欲しい物をみつけ、そのあとで値を見ればいいんだ。そして、その値が手に届かないものなら、思い切ってあきらめるんだね>
買いものに、値段はつきもの。しかし、最初から値段を気にしていては、本当に望むものを見失いがちだということです。安さに惹かれ、さほどほしくないものを買ってしまったり、本当は高いものがほしいのに安いほうで我慢して後悔したり。身に覚えがおおいにあります。
本当にほしいかどうかを見極めてから、値をみて判断する。値札をめくりたい気持ちを抑えるのはなかなかむずかしいですが、だからこそまず自分に問いかけてみることが、本当にほしいものを手に入れる秘訣なのです。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。
澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。
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