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「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】

東京展、大阪展、それぞれで公開される絵は? 見どころを押さえておけば楽しみも倍増。美術評論家の千足伸行さんのワンポイント解説もぜひ参考に。

監修・千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館館長) 文・石飛カノ コラム取材協力・吉野敏彦(『フジテレビジョン』シニアプロデューサー)

【6/35】赤い帽子の娘

赤い帽子の娘 1665-1666年頃  ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington,  Andrew W. Mellon Collection, 1937.1.53 東京展 ※展示は12月20日まで。
赤い帽子の娘 1665-1666年頃  ワシントン・ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art, Washington, Andrew W. Mellon Collection, 1937.1.53 東京展 ※展示は12月20日まで。

ミステリアスな容貌と表情の女性がふとした瞬間にこちらを振り向いた、というスナップショット的な作品。
女性の顔の右側のほとんどは帽子の影に暗く覆われているのに対し、左頬は明るい光に照らし出されている。瞳、鼻の頭、唇、真珠のイヤリングには光の粒が描かれ、影との対比で見るものに鮮烈な印象を与える。
背後にかかったタペストリーや帽子の質感、配色など、細部にわたる緻密な描写は圧巻。こちらも日本初公開。

細部に施された光の描写。

「実はこれに近い帽子をレンブラントも描いています。オリエンタルな雰囲気を持つ作品ですが、当時オランダでオリエンタルといえば東洋ではなく中近東。エキゾチックな趣味が流行していたのでしょう。見逃せないのは、目や唇、青い衣装の光の表現。このあたりの描写はフェルメール独特のもので他の画家にはない特徴です」(千足さん)

「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】

【7/35】リュートを調弦する女

リュートを調弦する女 1662-1663年頃  メトロポリタン美術館 Lent by the Metropolitan Museum of Art, Bequest of Collis P. Huntington, 1900 (25.110.24).  Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY 東京展、大阪展
リュートを調弦する女 1662-1663年頃  メトロポリタン美術館 Lent by the Metropolitan Museum of Art, Bequest of Collis P. Huntington, 1900 (25.110.24). Image copyright © The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY 東京展、大阪展

窓辺でひとりリュートを抱え、調弦をする女性。光が左側の窓から差し込んでいる。
白い毛皮つきの黄色いマントはフェルメールの複数の作品に登場する。女性は窓の向こうに視線を向け、壁にかかった地図の下部には「EUROPE」の文字。地図は「船乗り」、リュートは「恋人」、遠く離れた愛する人の帰りを待つ女性の姿を描いたという見方もある。
傷みが激しいといわれる作品だが、光と影のコントラストやミステリアスな静謐さは他の作品にひけをとらない。

調弦に隠された意味。

「画中の人物は中心からやや左に配置されています。真ん中に置いてしまうと、そこにどっかり居座っている雰囲気になってしまうのであえてずらしているんです。背景の地図の下の重りが人物の頭のあたりに描かれていて、これがアクセントに。また調弦は“節制”や“自己管理”の意味をもつといわれています」(千足さん)

「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】

【8/35】真珠の首飾りの女

真珠の首飾りの女 1662-1665年頃 ベルリン国立美術館 © Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie /  Christoph Schmidt 東京展
真珠の首飾りの女 1662-1665年頃 ベルリン国立美術館 © Staatliche Museen zu Berlin, Gemäldegalerie / Christoph Schmidt 東京展

6作品に登場する黄色いマントを羽織った女性が、鏡を見ながら今しも真珠の首飾りをかけようとする様子。黄色いカーテンがかかった左側の窓から、オランダ特有のやわらかい光が差し込んでいる。
左側からの光、真珠に反射する光、黄色いマントの単身女性、人物の存在を際立たせる無地の壁。「光の魔術師」と称されるフェルメールならではの特徴が十二分に詰まった中期の名作。
フェルメールは「青の画家」と称されるが「黄色の画家」でもあることがよく分かる。

背景の地図を消して壁に。

「女性が最も女性らしく見える瞬間を切り取った作品。奥さんがモデルではないかという説もありますが、本人の肖像が存在しないので特定するのは難しいでしょう。背景には最初、地図が描かれていたらしいですが途中で塗りつぶしています。ここにも、結論を出すまでに時間をかけるフェルメールの凝り性ぶりが窺えます」(千足さん)

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