くらし

「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】

東京展、大阪展、それぞれで公開される絵は? 見どころを押さえておけば楽しみも倍増。美術評論家の千足伸行さんのワンポイント解説もぜひ参考に。
  • 監修・千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館館長) 文・石飛カノ コラム取材協力・吉野敏彦(『フジテレビジョン』シニアプロデューサー)

【1/35】牛乳を注ぐ女

牛乳を注ぐ女 1658-1660年頃  アムステルダム国立美術館 Rijksmuseum. Purchased with the support of the Vereniging Rembrandt, 1908 東京展

台所で牛乳を注ぐことに没頭する女性、というごくありふれた日常の所作を描いた作品。
20代の頃に描いたものだが、フェルメールの特徴的な色使い、青と黄色、赤の三原色の対比の鮮やかさに目を奪われる。青はもちろん、ラピスラズリのフェルメールブルー。
「やわらかな光に照らされた室内に佇む単身の女性」というのもフェルメールが好んで描いた構図。細かい粒子で構成された光の描写も見られる、フェルメールの代表作のひとつ。

配色と絶妙の構図に注目。

「青と黄色といういかにもフェルメールらしい色が使われています。そして、絵の中に描かれている人物は1人。牛乳を注ぐことに神経を集中させている無心の様がリアリティを感じさせます。構図という点では、人物を少しでも右か左にずらすと絵のバランスがガタッと崩れてしまいます。ここしかないという構図です」(千足伸行さん)

画面に奥行きを生み出す遠近法のピンの跡。右手のすぐ上の壁の部分にピンを刺し、ピンに糸を結んで画面の外側に向けて張り、窓枠を画面上に描いた。一点消失法という遠近法。
窓から差し込む光の反射を描くポワンティリスム。砕いたパンとパン籠に光の雫が。ポワンティリスムと呼ばれる点描技巧。この時代ではフェルメールの作品のみに見られる。
釘1本まで克明に描く。徹底したリアリズム。壁に打ち込まれた釘1本、釘跡までを、克明に再現。目に見えるものを忠実に描くフェルメールのリアリズム。
生活感のある足温器が絵の奥行きを演出する。もともとは大きな洗濯籠が描かれていたが、それを消して描かれた足温器(あんか)。当時の生活風景が読み取れる。
フェルメールの代名詞のひとつ、青×黄色。青と黄色の組み合わせはフェルメール作品に多く見られる配色。この青の表現に使われているのはラピスラズリの高価な絵の具。
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