パリの共存形態で思うこと。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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パリの共存形態で思うこと。│束芋「絵に描いた牡丹餅に触りたい」

パリでの生活が1カ月経った。パリは昔からホームレスの方々が多いと聞いていたけれど、今回、私が滞在させてもらっている場所は、それを実感させられる建物だった。

スーパーに買い物に行く時間はだいたい午後、まだ陽の高い時間で、建物から外に出たところはいつもおしっこの臭いがしていた。パリでは昔から「犬の排泄物があちこちにあるから、下を見て歩くこと」というのが鉄則なので、この辺りで犬がいつもおしっこをするのかな、と思っていた。

暗くなってから帰って来たある日、建物の1F、ピロティになっている部分に、テント、マットレス、寝袋なども敷かれ、音楽フェスが行われているかと思うほど、ギッシリとホームレスの方々が並んで就寝準備をしていた。パリ4区で生活すると言われるホームレス約100人の半数ほどはここに集まってくるようで(パリ市全域では3000人以上)、ここに落ち着いたホームレスの顔にはどこか安堵の表情が浮かんでいるように見えた。中には若いバックパッカーの方も居る。それでも朝、店がオープンする頃には、綺麗さっぱり何もない。建物を出たところのおしっこの臭いも、一部は彼らのようだが、公衆トイレが少ないパリでは、バスの運転手なども、平気で街中で立ち小便をしているので、ホームレスに限ったことではないようだ。街の人たちもホームレスに優しいところがあり、問題を起こさない限りは排除するようなことはしないらしく、若い女性とホームレスが楽しそうに話していたり、日本では考えられない光景もみられる。多くのホームレスが集まるから夜は騒がしいのかというとそうでもなく、私の帰宅が夜11時半になったときには、まるで修学旅行の就寝時間を守るまじめな高校生のように、皆さん静かに眠りに就いていた。

結局、よくわからない人たちを「怖い」と思う気持ち、怖いから排除しようとする人、排除されそうになり、攻撃的になる人、それを怖がる人……というサイクルが、お互いの恐怖を煽り、問題を大きくしていくのだな、と感じた。ホームレスを肯定するわけではないけれど、こういう街の形もあるんだな、と少し感心してしまった。

束芋(たばいも)●現代美術家。近況等は https://www.facebook.com/imostudio.imo/

『クロワッサン』982号より

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