【陶芸家と布作家の夫妻の食卓】大きな蒸し器にほかほかパン、 朝採れ野菜で1日が動きだす。
撮影・三東サイ
『パラダイス アレイ』は鎌倉の通称「レンバイ」と呼ばれる鎌倉中央食品市場内にあるパンの店。店主の勝見さんは10年前から酵母の培養や発酵の研究を行い、自家製酵母でパンを焼いている。また、人類皆菌類を合言葉にパン作りが体験できるワークショップを開催したり、パンに粉でコラージュした作品を発表したりしている。
「メッセージ性のあるパンを作っているのが面白い。今回届いたものも、彼がパンを作った日の惑星配置図がデザインされています」(小野さん)
小野さんと勝見さんはそれぞれが作った器とパンをもとに、2012年に二人展を開催している。
「『かまパン』の真鍋くんもそうだけど、パンを通じて表現したいことがわかると、信頼して食べられます」
畑、果樹園、原木、ハチの巣箱。パンのお供は自家栽培もの。
朝、小野さんは日課となっている家族全員の洗濯をすると、仕事場へ移動し、ろくろを回す毎日。早川さんは自ら耕している4つの畑や果樹園に出向いて、野菜や果実を収穫する。
最初に向かった母屋の裏手にある畑には、土の上に少しの葉だけしか見えていない。早川さんは畑を見渡しながら腰をかがめて歩きつつ、ひとつの畝の前で立ち止まると土中を手で掘っていく。しばらくすると、現れたのは小さめのにんじん。
「本当はもう少し大きくなってからのほうがいいけれど、これぐらいのサイズのにんじんを搾ってジュースにしてもいいかなと思って」
続いて別の畑では葉野菜を採る。こちらは朝のサラダに使う。
「この時季は冬越ししたルッコラや、レタスとチシャ菜が美味しいんです。朝に採りたての生野菜を食べると酵素の働きで元気になります」
その後も早川さんは、ブロッコリーや庭で原木栽培をしているしいたけ、小夏と呼ばれる柑橘を慣れた手つきで収穫。手と腰につけたかごをいっぱいにして台所に戻ると、朝食の準備にとりかかる。
中国から来日した早川さんの弟子のキョウさんにも手伝ってもらいながら、収穫した野菜や保存しておいた根菜などをもとに調理が進む。
「パンにつけるブルーベリーや杏、マーマレードもうちの畑や果樹園で採れたものから作っています。それとハチの巣箱を30個ほど近所に設置しているので、そこに入ってきたニホンミツバチの蜜を集めています」(早川さん)
この日パンに添えた料理は、ジャガ芋入りのオムレツ、しいたけのバター炒め、生野菜サラダ、茹でたブロッコリー、里芋のスープ、自家製の豆乳ヨーグルトなど。早川さんは炒め物を終えると、6種類のパンを用意する。
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