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自然と人と人、その無理なく触れ合う心のハーモニイが器を生かすもと――辻協(陶芸家)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は目利きが語る、うつわ使いの秘訣に耳を傾けてみましょう。

文・澁川祐子

1977年7月号「夏の日の器」より
1977年7月号「夏の日の器」より

自然と人と人、その無理なく触れ合う心のハーモニイが器を生かすもと――辻協(陶芸家)

辻協さん(1930-2008)は、1971年に女性で初めて日本陶磁協会賞を受賞。夫で同じく陶芸家の辻清明さん(1927-2008)とともに東京の多摩市に登り窯を築き、女性陶芸家の草分けとして活躍した人物です。

目利きとしても知られた辻さん夫婦。この号では協さんのみ登場し、夏のうつわ使いについて語っていますが、おそらくこの記事が好評だったのでしょう。次号から、夫の清明さんと連名で<暮しの中の「やきもの」>と題する連載がスタートしています。

協さんのうつわ使いのポイントは、四季折々の自然を取り入れること。

名言に<無理なく触れ合う>とあるように、庭木をちょっと手折り、料理に合わせる。そんな身近な自然と、ささやかな心遣いの掛け合わせがうつわと料理を生かしてくれるというのです。

たとえば、水ようかんやくずもちで客人をもてなすとき。夏のうつわというと、ガラスをすぐ思い浮かべますが、協さんは信楽や備前の焼き締めのお皿を選びます。

土のにおいのするうつわも、たっぷりと水を含ませると、涼しげな表情に変化。そこに、新鮮な葉っぱを添えると、<土肌の生きた焼ものに冷水の雫、それはまるで庭石に水を打ったときのように、とたんに生き生きと呼吸しはじめるのである>と語ります。

土味のするうつわと、つるりとした和の冷菓をみずみずしい緑でまとめる。この暑いさなかにさっそく真似してみたくなる、涼を呼ぶひと皿のつくり方です。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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