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鹿児島の風土と人の手間が、麹と玄米を滋味豊かな黒酢に育む。

黒酢の産地として有名な鹿児島・福山町は、「空中に舞う麹の菌で疫病が流行らない」と言い伝えられている。そんな黒酢が造られる過程と魅力を探った。

撮影・清水朝子

いつでも手に取れるところに。意外な黒酢の使い方も。

かめ壺でじっくり熟成した黒酢は、様々な商品に加工される。(左)最もオーソドックスで、美容成分D-アミノ酸が多く含まれる、1年熟成の黒酢。熟成1年玄米黒酢 4.2% 900ml 1,800円 (左中)北海道利尻産の根昆布がそのまま入っているだし酢醤油。酢が約20 %入っているため、後味すっきり。根昆布醤油 185ml 500円 (右中)かめの中で造られたりんご酢と、りんごを漬け込んだ黒酢をブレンド。白井農園 信州 佐久産無農薬林檎使用りんご甕酢 185ml 860円 (右)黄金生姜のペーストが入っている。薄めて飲んだり、料理にうま味調味料として使う。高知県産黄金生姜使用甕酢 185ml 1,100円
かめ壺でじっくり熟成した黒酢は、様々な商品に加工される。(左)最もオーソドックスで、美容成分D-アミノ酸が多く含まれる、1年熟成の黒酢。熟成1年玄米黒酢 4.2% 900ml 1,800円 (左中)北海道利尻産の根昆布がそのまま入っているだし酢醤油。酢が約20 %入っているため、後味すっきり。根昆布醤油 185ml 500円 (右中)かめの中で造られたりんご酢と、りんごを漬け込んだ黒酢をブレンド。白井農園 信州 佐久産無農薬林檎使用りんご甕酢 185ml 860円 (右)黄金生姜のペーストが入っている。薄めて飲んだり、料理にうま味調味料として使う。高知県産黄金生姜使用甕酢 185ml 1,100円

黒酢の産地・福山の人々は料理だけでなく様々な場面で黒酢を使っている。重久盛一酢醸造場の休憩室を訪ねると、冷蔵庫にはオーソドックスな黒酢から、りんご酢やブルーベリー酢などの果実酢、そして薔薇酢や生姜酢など少し珍しいものまで、ぎっちりと瓶が並んでいる。社員は好きな時に好きなだけ飲むことができる。
「朝と昼の2回、シンプルに炭酸で黒酢を割って飲むのが日課です。少し甘いものが欲しい午後は、りんご酢を牛乳で割ったり……。若手社員は豆乳で割るのが好きみたいですよ。これがなければ夏場の仕事は乗り切れません」(坂元さん)

牛乳や豆乳に黒酢を入れると、酸によるタンパク質の変性が起こり、ヨーグルトドリンクのようなとろっとしたのど越しになる。飲みごたえもあるので、午後のデザートドリンクとしてちょうどいい。

晩酌用に、お酢を小さなボトルに詰め替えている盛哉さん。1杯につき黒酢20mlほどを入れる。
晩酌用に、お酢を小さなボトルに詰め替えている盛哉さん。1杯につき黒酢20mlほどを入れる。

社員をはじめ、福山町の男性がよく飲むのが、焼酎の黒酢割り。
「鹿児島の男性は、仕事を終えるとお湯の入ったポットとグラス、芋焼酎の3点セットで、“ダレヤメ”(鹿児島弁で晩酌)をするのが定番。もちろん私も毎晩です。お湯割りをした焼酎のグラスに、黒酢を加えるだけ。そうすると、少し飲み過ぎたかな、と思っても二日酔いになることがありません」(重久盛一酢醸造場会長・重久盛哉さん)、「山芋を掘る(鹿児島弁でしつこく人に絡む)こともありません」(坂元さん)と男性陣が絶賛する。

黒酢1:精製水8の、自家製化粧水が美の秘訣。洗顔したら、黒酢化粧水とクリームだけ。豊かな髪と透明感のある肌に、内側からあふれる若々しさを感じる。
黒酢1:精製水8の、自家製化粧水が美の秘訣。洗顔したら、黒酢化粧水とクリームだけ。豊かな髪と透明感のある肌に、内側からあふれる若々しさを感じる。

さらに驚くのが、盛哉さんの叔母、下野トキエさんの黒酢の使い方。御年87歳! 下野さんは、お酢を飲んだり食べたりするだけではなく、スキンケアにも使っているのだ。
「5合瓶にお酢を100ml、残りは精製水を注ぎ、洗顔後に手に取って顔や首になじませるだけ。10年以上続けています」(下野さん)
誰もが驚く白くてハリのある肌こそが、効果の証明だ。作った化粧水は冷蔵庫で保存することがポイントとのこと。ただし、これは産地ならではの使用法。試すなら、ごく薄い割合から始めていこう。

身体に疲れが溜まったとき、お風呂の湯に黒酢を入れることもあるという。
「黒酢を入れると、お湯が人の肌と同じ弱酸性に。夏の炎天下の仕事で疲れ切った身体を、酢酸とアミノ酸の力が回復させてくれます。ただ、一般的な入浴剤よりもコストがかかるので、ここぞのときの特別ケア。効果は充分にあります」(重久雅志さん)
賞味期限の切れてしまった黒酢の使い方としても、よいかもしれない。そのほかにペットボトルのキャップ1杯ほどの黒酢を水を張った洗面器に入れ、シャンプー後の髪に含ませて、リンス代わりに使うことも。キューティクルを引きしめ、さらさらの髪になる。その際は、さっと洗い流すのを忘れずに。食べたり飲んだりするだけでなく、身体の外側からも黒酢は美と健康をもたらしてくれる。

少人数かつ手作業が多い、 創業213年の老舗黒酢工場の一日。
少人数かつ手作業が多い、 創業213年の老舗黒酢工場の一日。
朝の朝礼風景。仕込み日の異なる大量のかめ壺を管理し、その状況を大まかに説明する大切な時間だ。
朝の朝礼風景。仕込み日の異なる大量のかめ壺を管理し、その状況を大まかに説明する大切な時間だ。
休憩室の冷蔵庫には、自由に飲める黒酢商品がずらり。炭酸マシンで新鮮な炭酸水を作り、割って飲むのが最近のブーム。
休憩室の冷蔵庫には、自由に飲める黒酢商品がずらり。炭酸マシンで新鮮な炭酸水を作り、割って飲むのが最近のブーム。
重久家の最も古い写真。いつのものか明確ではないが、周りにはかめ壺が。左から5人目が、初代・重久盛一さん。
重久家の最も古い写真。いつのものか明確ではないが、周りにはかめ壺が。左から5人目が、初代・重久盛一さん。
少人数かつ手作業が多い、 創業213年の老舗黒酢工場の一日。
朝の朝礼風景。仕込み日の異なる大量のかめ壺を管理し、その状況を大まかに説明する大切な時間だ。
休憩室の冷蔵庫には、自由に飲める黒酢商品がずらり。炭酸マシンで新鮮な炭酸水を作り、割って飲むのが最近のブーム。
重久家の最も古い写真。いつのものか明確ではないが、周りにはかめ壺が。左から5人目が、初代・重久盛一さん。

重久盛一酢醸造場
鹿児島県霧島市福山町福山2246-1 TEL:0995-55-2441
http://osuya.co.jp
通販: http://www.shigehisa-masashi.jp

『クロワッサン』976号より

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